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前を向いていたい   

martynov: vita nuova
solists, chorus, vladimir jurowski / lpo @royal festival hall


少年の声で音楽が始まりました。これって。モンテヴェルディのヴェスプロみたい(な音型)。もしかしてこれからヴェスプロが引用?ってヴェスプロ好きなわたしとしてはよこしまな期待をしてみたりしてみたけど音楽はちゃんと別の方向に流れていきました。マルティノフ(と読むんでしょうか)さんは戦後生まれのロシアの作曲家。ダンテの詩に基づく神様と人との愛のオペラです。今日はその完成版の初演。音楽会形式です。
さて始めにネタバレしたように、この曲は最初期バロックの雰囲気を持って書かれています。そこに現代的な書法を加えてはいるのですが、シンプルで全く耳障りの良い音楽となってます。こういう音楽を初めて聴くのだったら、新鮮な驚きもあるのだけど、すでにこの手法、アルヴォ・ペルとさんによって書かれています(ヨハネ受難曲を初めて聴いたときには本当に驚いた)。現代は、未来が見えずに時代に絶対の自信が持てなくなった時代、価値の多様化が進んで、いろいろな価値観を混在させうる時代だと思います。過去から未来に向かっていく今の必然が見えなくなっているというか、もはやそんなのものは失われたのか。音楽におけるあらゆる混沌、今の音楽よりも過去の音楽の偏重はまさにそんな今を示しています。ですからマルティノフさんのこのオペラもそんな現代を象徴しているのかもしれません。モンテヴェルディのような響きも現代の大オーケストラ(オーケストラの編成はマーラー並みに大きかったです)によって作り出されています。モンテヴェルディ好きのわたしとすればちょびっとうれしかったりもしたんですけど、でもやっぱり引っかかっちゃうんですよ。今この曲が在る意味に。確かにダンテの詩に基づく神様と人が不可分な時代のお話はこういう音楽を付けるのがいいのかもしれないけれども。
最後はオーケストラがパートごとに少しずつ消えていきステージを降りていくのですが、大きなコントラバスを抱えてステージを降りていくのはちょっと可笑しかった。チェレスタの1人と指揮者が最後に残って音楽はお終い。わたしの気持ちは新生することなく取り残されました。

by zerbinetta | 2009-02-18 09:01 | ロンドン・フィルハーモニック

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