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老大家   

schumann: piano concerto
bruckner: symphony no.9
murray perahia (pf), bernard haitink / royal concertgebouw o


世界一たれ目の似合う音楽家、ペレイアさん。実はわたしとはちょっぴりそりが合わない。どうして?って言われるとよく分からないんだけど。って1回しかリサイタルを聴いたことのないわたしが言えることじゃないんだけどね。でも、やっぱりそんな感じは残りました。ペレイアさんは音も大きくしっかりした感じでとてもよくシューマンの協奏曲を弾いたんだけど、そしてハイティンクさんとコンセルトヘボウの音の悔しいくらいうっとりするような音色だったんだけど、わたしの持ってるものと何かが違う。なんだろう?わたしにはペレイアさんが曲を立派に弾きすぎてるんじゃないかと思われる。なんか知的に構成してしっかりとした構造物として。その結果、その音楽が持っている弱さも消えるけど、同時に弱さ故に美しい曖昧な部分も失われると思うの。特にシューベルトやシューマンなんかの個人的なモノローグが作品の大事なところにある音楽は、ペレイアさんの方法では理知的になりすぎると思うんです。何でも立派な音楽にしてしまう。もちろん、これは良い悪いではなくて好みの問題でもあるんだけど。ティンパニの調律が最初微妙に違っててさっと直してましたけど、ずっしりと重い感じの音で叩かせていたのにはちょっとびっくり。でも、これがあとで生きるんですけど。
ブルックナーの第9番はこの間、メータさんとウィーンフィルで聴いたばかり。実は今日はブルックナーの第7番だ〜ってずうっと思いこんでいて会場でプログラムを見てびっくり。心の準備は7番だったのに。何とか第9番モードに入って聴く体勢。でも、そんなこんなは最初の音が聞こえた瞬間に吹き飛んでしまいました。ステキすぎる。シューマンの時点でオーケストラがめちゃくちゃ上手いというのは分かっていたけれども、もうなんというか次元を超えた上手さ。今シーズン聴いてきた中では圧倒的に一番でしょう。音色もいいしアンサンブルもステキ。そしてハイティンクさんの音楽はしっかりとオーケストラをコントロールしているのに、無為というか指揮者がいない。そこにあるのはブルックナーの音楽だけ。全くブルックナーに音楽を語らせてる。わたしは実はお年寄りになって何故か世評がうんと良くなったハイティンクさんには、元来世の中をひねた目で見る癖かハイティンクさんってそんなにいい?って批判的な態度でいたのだけど、改心するっ!ここには純粋に音楽だけがある。そんな音楽を生み出すことのできるハイティンクさんはやっぱり凄かったんだ。雄大で純粋なブルックナー。ティンパニをしっかりと深い音で叩かせていたのが印象的でした。今日はちょっぴり寝不足もあって頭も痛く大丈夫かなと思っていたんですが、全く音楽に集中して浸ることができました。前に聴いて絶賛したネゼ・セガンさんのブルックナーもうんと良かったけど(そしてその価値は少しも変わることがないのだけど)、ハイティンクさんの真に巨匠的な(あまりこの言葉は使いたくなかったのですが、他によい言葉が見つからなくて)精神の充実した自然体の音楽を聴いてしまうとまだ若さが感じられるのでした。でも、わたしは若いワインも大好きなんですよ。

by zerbinetta | 2009-03-15 07:50 | 海外オーケストラ

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