風そよぐバッハ   

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bach: complete works for unaccompanied violin
alina ibragimova (vn) @barts hospital, great hall (part 1),
st bartholomew-the-great (part 2)


勝手に応援してるヴァイオリニスト、アリーナのソロ・リサイタル。バッハの無伴奏全曲を2回に分けて1日で弾いてしまうというとんでもすごい音楽会です。シティ・オヴ・ロンドン・フェスティヴァルの一環です。歴史ある慈善病院のお部屋と小さな教会での音楽会。会場の建物の雰囲気もとってもステキで、天井画なんかを見るとそれだけでわくわくします。第一部、地味な方のソナタとパルティータの1番、ソナタの2番はバーツ・ホスピタルのホールです。グレイトホールといっても客席はパイプ椅子で500人程度でしょうか。初めて行くところだったので案の定道に迷って、余裕を持って出てきたのに着いたら開演間際でした。彼女のウェッブサイトで着てた濃い葡萄色のドレスがステキ。彼女結構ほっそりとして華奢なんですね。
バッハの音楽はものすごく集中力いると思うんだけど、アリーナはとても丁寧に風が木の葉を揺らすようなさやさやとした若いバッハを聴かせてくれました。テンポは少し速めでそよそよ音楽が流れます。バッハの持つ複雑なそしてわたしにとって正しすぎると感じる息苦しい精緻さはみじんも感じさせず、澄んだ高原の空気に感じられるような爽快さがありました。精神的な奥行きはまだ少ないかもしれません。でもアットホームな心穏やかなバッハです。ひとつだけ残念だったのは、ソナタ第2番のアンダンテのリズムが乱れていたこと。同じ長さのリズムの伴奏を刻みながら重音で旋律を奏でるのでとっても難しいと思うんですけど、リズムが安定していませんでした。彼女もずいぶん弾きづらそうにしていました。

すぐ近くのセント・バーソロメウ教会で1時間ほどの間を置いて始まった第2部は有名な3曲。パルティータの第2番と3番、ソナタの3番です。長大なシャコンヌやフーガを含んでいて、技術的にも精神的にも大変。でもアリーナはしっかりと弾ききりました。シャコンヌは速めのテンポで一見あっさりなんだけど息をつかせぬ緊張感があってぐいぐいと音楽に引き込まれました。それにしてもこれがこのプログラムの1曲目なんですね。この音楽のあとにまた違う曲を弾くタフさには驚きました。ソナタ第3番の大きなフーガは一転して遅めのテンポ。各パートの入りをとっても上手くコントロールしてフーガの妙をしっかりと丁寧に聴かせてくれました。彼女のポリフォニーの扱いとっても上手い。ヴァイオリン一挺でこんなに複雑な音楽が生まれるんですね。バッハも凄いしアリーナも凄い。最後のパルティータのさ3番は前の2曲に比べてかわいらしい音楽だけど、最後を飾るにふさわしい充実したものでした。前の2曲で力を使い果たしてふっと気が抜けるかと心配もしたけど、全然、集中力が切れることなくステキでした。彼女のバッハの良さは実に自然であること。速めのテンポで音楽がとっても素直に流れてふわりとステップを踏むようなリズムが心地良いの。
音楽会最後にアンコールを弾いてくれました。なんと!ソナタ第2番のアンダンテ。やっぱり最初の演奏が納得できなかったのかしら。今度はちゃんとリズムを刻んで、彼女も満足のできる演奏だったんじゃないかって勝手に想像しました。終演後の彼女、とても満足そうだったし。

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by zerbinetta | 2009-06-24 06:56 | 室内楽・リサイタル

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