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ちょっと疑問のシカゴ・シンフォニー   

haydn: symphony no.101
bruckner: symphony no.7
bernard haitink / chicago symphony o. @royal festival hall


昨シーズンはロイヤル・コンセルトヘボウとブルックナーを演ったハイティンクさん。80歳になってもますます元気。今シーズンはシカゴ・シンフォニーとブルックナーの交響曲第7番です。ロンドン・シンフォニーでもマーラーなどを振るので80歳の記念年ということでしょうか。今日はハイドンの交響曲第101番、「時計」と。この曲、前にも聴いたことがあるので、ハイティンクさんお好きなんでしょうか。音楽は時計が止まったような静かな動きのない序奏で始まりました。これにはびっくり。時間の始まる前の始原の宇宙に漂ってる感じ。オーケストラの音色がしっとりしたものではなく、摩擦力のないスルリとした感じだったので余計漂ってるように聞こえたのでしょう。十字架上の7つの言葉みたい。でもその静けさは主部が始まると一気に破れました。ハイドンらしい快活な音楽。わたしは交響曲ならこっちのハイドンが好き。ハイティンクさんとシカゴ・シンフォニーはステキなハイドンを聴かせてくれました。交響曲というとマーラーやブルックナーなどの大編成の派手なのが人気で、ハイドンやモーツァルトをきちんと演奏できる人が少なくなってきている気がするのがとっても残念です。ちゃんと聴くとこんなにステキなのにね。
ブルックナーの交響曲第7番はブルックナー苦手なわたしの一番大好きな曲。この世で最も美しい交響曲だと思います。そんな思い入れのある音楽。ハイティンクさんとシカゴ・シンフォニーはどんな演奏をするのでしょう。静かな弦楽器のトレモロからあの美しい旋律が浮かび上がったとき、ああやっぱりいいなぁって引き込まれます。中庸のテンポで丁寧に歌うのですが、ハイティンクさんの演奏は音の止め方に特徴があるように感じました。4分音符短め。シカゴ・シンフォニーは確かシカゴの金管と呼ばれるくらい金管楽器が鳴りの良い、上手いオーケストラだと思っていましたが、今日のハイティンクさんの演奏は金管楽器を抑え気味。そして第1楽章前半は金管楽器の音が貧弱で、さらにミスの多い、なんか集中力を欠くような演奏でした。最近のオーケストラはどこも上手になって、ミスをするの聴くのが珍しくなったくらいだと思っていたのですが、シカゴからこんなにミスを聴けるなんて思ってもみませんでした。あっわたしはミスはだめだと言ってるのではないのですよ。音を外したりするのはしょうがないと思うんです。でも、今回のは基本的な刻みのリズムがとれてないとか、なんか消極的に自信なさげに聞こえるとか、ミス以前の問題のようなミス。わたしの方もなかなか音楽に集中できなかった。期待しすぎ?でもハイティンクさんとシカゴよ。しかもハイティンクさんはたまにシカゴを振るんじゃなくて、シカゴの主席指揮者なんですもの、もっとオーケストラと意思の疎通があってもいいような気がします。正直、シカゴ・シンフォニーが上手かったのは昔のことなのかなぁって思ってしまいました。もちろんそれでも上手いんですけどね。弦楽器なんかものすごくいい音出してたし。ハイティンクさんの演奏はいつものブルックナーのときのようにいたって自然。でも、今回はちょっぴりハイティンクさんの意志を感じました。とにかく流れるように美しく音楽を奏でることです。確かにこの曲はブルックナーの交響曲にあって特異的に音楽が流れてブルックナーに特徴的なブロック構造はあまり目立たないのですが、ハイティンクさんはことさら自然な音楽の流れを重要視してたように思います。テンポはをなるべく動かさず、目立ったテンポの変化はあまりありませんでした。3楽章のスケルツォとトリオの間にさえあまり差をつけていませんでした。それはこの曲の中で唯一ブロック構造の目立つ第4楽章でも同じ。ブロックごとに区切って対比の面白さを聴かせる演奏もありと思うのですが(ネゼ・セガンさんのように)、さらさらと流れる草書体のブルックナーもいいなと思いました。もうひとつの音楽を常に美しく鳴らすことに関しては、金管楽器を抑えすぎている感じがして最初上手くいってないように思いました。第1楽章後半からは持ち直したのですが、それでも金管合奏がわんわん鳴るところはもっと開放的に音で遊んだ方がわたしは好きです。大きな音で無邪気に金管楽器を鳴らすのをブルックナーは楽しんでいたように思うのです。ひとつの音楽の中に納めるのではなく、音楽をはみ出してならした方がなんかもっとブルックナーらしいなんて、ブルックナーをあまりよく知らないくせに思うんです。演奏は盛大な拍手とスタンディング・オベーションで迎えられましたが、わたしは今書いたような引っかかりがあったので、大きな拍手はしませんでした。

by zerbinetta | 2009-09-24 08:59 | 海外オーケストラ

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