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ロンドンでも1Q64流行ってる?   

janacek: sinfonietta
lindberg: graffiti
stravinsky: the firebird (1910)
esa-pekka salonen / philharmonia voices, po @royal festival hall


最近ヤナーチェクのシンフォニエッタがにわかにブームなんだって?ネットで知りました。ヤナーチェクってどこの人?いつの時代?ってクラシック音楽をよく聴く人でも知らない人多いよね。チェコ(モラヴィア)の人でドヴォルジャークの次の世代、バルトークの民族音楽的方法の先輩です。とか言いつつ、わたしが聴いたことのあるのはグラゴル・ミサとイェヌファくらい。あとCDではシンフォニエッタとタラス・ブリバ、内緒の手紙くらいかな。で、シンフォニエッタなんて聴いてもよく分からない曲。村上さんの小説を読んでシンフォニエッタを買ってしまった人はため息をついてるでしょう。っていうのは勝手な想像。わたしは小説は読んでいないのでした。サロネンさんのフィルハーモニアの今シーズン最初の演奏はそのシンフォニエッタから。ステージの後ろの合唱席にトランペット9人、バストランペット2人、テノールチューバ2人。もちろんステージのオーケストラの中にもトランペット。ふふふ、これではハチャトリアンの交響曲第3番みたい。そしてなぜか合唱の人も。この曲合唱入ったっけ?サロネンさんの演奏はわりとゆったり目のテンポで、かっこいいんだけど、やっぱりわたしはこの曲がよく分かりませんでした。モラヴィアの言葉に基づく独特の作曲技法にまだ親しめないからでしょうか。ティンパニが(多分)堅めのばちで叩いているせいか、音が軽くて、高音はティンパニでも苦しそうに出すんだなって感じて面白かったです。あっそれからやっぱり合唱は歌いませんでした。次の曲には合唱が入るんだけど、曲の間に合唱団の人はいったん引っ込んだのでなぜ合唱がステージに出ていたのかは謎のままです。そういえば同じようなことがティルソン・トーマスさんとロンドン・シンフォニーのときにもあったな。ほんと、なぜでしょう?

2曲目はサロネンさんとも親しい同郷の(同級生の)マグヌス・リンドベルイさんの新作(サウスバンク・センターとフィンランド放送響、オスロ・フィルハーモニックの委嘱による)、グラフィティです。既に5月にフィンランドで初演されていますがイギリスでの演奏はもちろん初めて。で、大雑把に言ってしまうとヤナーチェクの曲と同じような雰囲気の音楽(言葉、乱暴かな?)。シンフォニエッタのあとでそのまますうっと音楽に入り込めました。裏を返すと今の作品なのにとっても古典的。なんの予備知識もなく聴かされたら、間違いなく第1次世界大戦から第2次世界大戦までの頃の作品と感じるでしょう。確かに聴きやすいいい曲だと思うんだけど、わたしはちょっと不満だな。

休憩のあとは火の鳥。サロネンさんは火の鳥得意よね。ずうっと前にも聴いたことある。でも、わたしは今は1945年版が好きで、ちっ全曲版か〜って斜に構えていました。だって、バレエの伴奏としての音楽ならいいけど、バレエがないと無駄な部分も多くてちょっと凡長な感じなんですもの。なんて思ってたのにサロネンさんの演奏を聴いたらころりと。むちゃかっこいい。火の鳥の音楽ってこうでなきゃってありとあらゆるものがぴたりと決まる。特に特に後半のカスチェイの凶悪な踊りからは快速テンポで息もつかせぬかっこよさ。ぞくぞくと身を乗り出して聴きました。そしてあの最後。わたしが1945年版を推すのは最後のマエストーゾで音符をスタッカートでざっざっと切っていくのがあまりにかっこいいから。それはもちろん作曲された当時(1910年)にはなかったアイディアで、これによってとっても現代的な響きが生まれるんだけど、今日のサロネンさんの演奏は1945年版寄りの演奏だったんです。ざっざっと切るまではしないけれども(そうすると違う音楽になっちゃう)、1音1音下げ弓で切って弾かせて、これが超かっこいいの。オーケストラのドライな音と相まってもうわたしのツボ一直線。終演後は会場から盛大な拍手と指笛ぴゅーぴゅー。ロンドンの音楽会でもこんなに指笛出るなんて。フランスでは派手やかな演奏のあとでは盛大な指笛普通だったのでつい嬉しくなっちゃった。日本ではする人いるのかしら。マナー違反って怒られちゃいそう。
そうそう今日は珍しい事故がありました。演奏に合わせてライトニングがなされてたのですが(例えば子守歌のところはステージを暗めにする(演奏者の譜面台にはライトが付いてます))、一瞬会場の電気が全て消えるという事故が子守歌のあとで起こりました。会場からは一瞬失笑が漏れたんですけど、音楽はそれによって緊張の糸が切れるほど脆弱ではありませんでした。会場の空気を引きつけたままフィニッシュ。ライトニング・デザイナーの人はプログラムにも名前がクレジットされていたので、重要な役割だったのに大失敗でかなり怒られるだろうな。ってかロイヤル・フェスティバル・ホールの天井の電気、ちかちかしたりときどき消えかかったり調子悪いんです。早く直して欲しい。

by zerbinetta | 2009-10-01 08:14 | フィルハーモニア

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