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ルスランとリュドミラの白髭の魔法使い   

glinka: overture, ruslan and ludmila
glazunov: violin concerto
dvorak: symphony no.9
nicola benedetti (vn), leif segerstam / po @royal festival hall


勝手に応援してる若いヴァイオリニストのひとり、ニキ(ニコラ・ベネデッティさん)が弾くのであらば聞き逃す手はありません。そして今日の指揮者はセーゲルスタムさん。何とも独特の風貌のでもちょっぴりお茶目でステキな指揮者です。身体が大きいので足がちょっとお悪いのが心配ですが。
始まりはグリンカのオペラ、ルスランとリュドミラの序曲。この曲とっても溌剌と速いので巨漢のセーゲルスタムさん、素速く振れるかしら? 重戦車みたいな超重量級の演奏しちゃうんじゃないかしら? なんて勝手に心配してみたりして。でも心配無用。なんと熱い溌剌とした演奏でしょう。ちょっと荒いところはあるものの音に込められた熱気はすごい。ティンパニ打ち放題。そうそう、セーゲルスタムさんって情熱的な演奏をするんだったわね。で、それでいて透明で暑苦しさのない、しっかりと組み立てられた演奏。セーゲルスタムさんの指揮はわたしにはわりと大雑把に見えるけど、フィルハーモニアの人たちは速い音符を一糸乱れぬアンサンブルでそろえていました。さすが、アンサンブルのいいオーケストラ。ルスランとリュドミラというとマリイインスキー劇場のDVDを持っているのだけど、その中に出てくる魔法使いが長い白髭で、セーゲルスタムさんみたい。ああやっぱりこの人は森の魔法使いなんだわ。

グラズノフのヴァイオリン協奏曲は初めて聴く曲だけど(というかグラズノフの曲自体初めて? と思ったらバレエのライモンダが彼の作品でした)、抒情的で親しみやすい音楽でした。第1楽章がちょっと盛り上がりに欠けて退屈でしたけど。トランペットのファンファーレが鳴るところはかっこよかったな。ニキはとっても安定したテクニックで、叙情性豊かに歌っていきます。こういうヴィブラート多めというかふくよかな感じの曲ってニキに良く合う感じ。カデンツァは重音の上に片方は常にトリルをしているといううんと難しそうな感じでしたが、もう憎いくらいに余裕で弾いていました。ニキはこれからどのように成長していくのでしょう。どんな曲を弾いていくのでしょう。肉感的で艶やかな音が彼女の持ち味ではあるけれども、デビューCDで弾いたシマノフスキのコンチェルトで聞かせた怜悧で理知的な面もバランス良く持っていて、これからがとても楽しみな人です。ベートーヴェンやブラームスなんかもいつか聴かせて欲しいな。

最後の新世界からも熱のこもった演奏でした。ワシワシと心をつかんできます。第1楽章のリピートのない演奏を久しぶりに聴いたけど、こっちの方がいいよね。振り出しに戻らなくても十分この曲知ってるし。第2楽章の中間部、コントラバスのピツィカートにのって木管楽器や弦楽器がコラール風の旋律を奏でる静かな部分が特に印象に残りました。わたし、マニアックな曲ばかり聴きたがる傾向があるんですが、たまにはこんな有名曲もいいな。オーケストラも適当に流すんじゃなくて熱く演奏してくれたのもまるです。

by zerbinetta | 2009-10-15 08:12 | フィルハーモニア

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