人気ブログランキング | 話題のタグを見る

予告編としたら○かな   

予告編としたら○かな_c0055376_4343952.jpg

scriabin: reverie, piano concerto
wagner/de vlieger: the ring, an orchestral adventure
yevgeny sudbin (pf), neeme jarvi / lpo @royal festival hall


この間の音楽会であまりに感動してしばらくは音楽会は行きたくない、新しい音楽を上書きしたくない、と思っていたのに行ってしまうんですね、音楽会。チケットはシーズン始まる前に買ってあるのですから。でも、感動ってひとつじゃない。モーツァルトが完璧な音楽を作曲したからベートーヴェンはいらないかというとそうではなく、ベートーヴェンが偉大でもシューベルトはステキだし、感動の形なんていくらでもある。分かっていてもでも、上書きしたくない気持ちもあって、そんな感じじゃ、今日の音楽会は不利ですよね。でも、パパビー(わたしだけの勝手なあだ名)ことネーメ・ヤルヴィさん、大好きだし聴きたいしね。曲も珍しいスクリャービンのピアノ協奏曲とかだし。

始まりは、ソロを含まないオーケストラ作品としては、最初の夢という曲。たった4分ほどの音楽。そして次はピアノ協奏曲。ピアノ協奏曲の方が書かれたのは先。初期のスクリャービンは後期のようにヘンな宗教(?)に染まってないので、ものすご〜くロマンティック、ショパン的。なのでこの2曲はとおってもロマンティックなのです。夢見るような音楽、あっ最初の曲はまさに夢だった。ピアノを弾いたのは、ロシア出身、現在ロンドン在住の弱冠28歳のピアニスト、エフゲニー・スドビンさん。とってもほっそりした身体で、髪の毛はちょっと硬そう。そしてちょっとかっこいい系。この人のピアノの音色、きらめく星のようでとってもステキだったの。硬質だけど丸みがあって、混じりけのない透明な色彩。うっとり。パパビーは若いピアニストを立てるようにサポート、ピアニストに寄り添うように音楽を奏でました。拍手に応えて、アンコール。多分スクリャービンの(初期の)小品だと思うのですが、音色が好みっていうのもあるのかな、これも良かったです。

休憩のあとは指輪。オーケストラ部分を抜粋して作ったダイジェスト版。15時間のオペラが1時間に。こういう試みは今日のデ・ヴリーガーさんの他にもマゼールさんのもの(わたしもニューヨークとワシントンDCで聴きました)などがあります。指輪は聴きたいけど時間がないという忙しい現代人にはお勧めかもね。あとわりと歌ものが苦手な人にも。長〜〜いオペラをものすごく縮めてるだけに場面がざくざくと進みます。物語おかまいなし。映画の予告編みたいね。重要なストーリーは隠されてて。それが不満と言えば不満ですけど、かえって全曲が聴きたくなったので予告編としては○でしょうか。でもね〜、普段はワグナーの長いくどいオペラに、じゃなかった楽劇とかに悪態をついてるわたしですけど、もしプッチーニやヴェルディが同じ題材でオペラを書いたらさくさくと1日で終わるでしょうなんて文句を行ってるわたしですけど、これはちょおっと短すぎるんじゃね。だって、ワグナーを聴きたい人はワグナーに浸りたいと思ってると思うのよ。ワグナーって麻薬みたいものだから。だとしたらもっと長くていいんじゃない。普通の音楽会でもマタイ受難曲だって3時間以上あったりするんだし、一晩の音楽会が指輪で終始するのがいいと思うのよ。それでこそワグナー体験。なのでラインの黄金とワルキューレで1時間くらい、休憩を挟んでジークフリートと神々の黄昏が1時間半くらいで作ればいいんじゃないかなぁ(これでも短すぎ?)。これくらいあれば、わりとストーリー追えると思うのよね。わたし的にはこれくらいがちょうどいいと思うし、家でも聴きやすいんじゃないかな。歌のラインは残念だけど楽器に置き換えて。
パパビーの演奏は、大局的に音楽を捉えて、でも、丁寧に、パパビーらしい良い演奏でした。彼、とてもレパートリー広いですけど(ものすごいマイナーな曲をいっぱいCDに録音してる)、どれも手抜きのないきちんと丁寧な演奏。そういう彼の美質がここにも現れていたと思います。オーケストラをきちんと鳴らすことにも長けてるし、丁寧な爆演タイプな感じだけど、わたしそういうの好きだし。そして意外なことに時折見せるかわいい指揮ぶり(はあと)。ますます気に入ってしまいました、ヤルヴィ一家の長。
そして、今日は珍しくアンコールも。ローエングリーンから第3幕への前奏曲。あっこれを聴くと結婚行進曲を期待しちゃうんだよね、オーケストラ版では続かないけど。はきはきと盛大に鳴らした演奏でした。今日もたくさんのマイクが立っていたのでCDになるのでしょうか(BBCのラジオ3ではないようです)。ローエングリーンはCD用のサーヴィスかな。ほんとのことを言えば、わたしは指輪の世界に浸ったまま音楽会をあとにしたかったな。だからこそ、一晩の音楽会にフィットするCD2枚分の長めの抜粋版が欲しいなって思うんですけどね。

by zerbinetta | 2009-10-28 04:33 | ロンドン・フィルハーモニック

<< 懐かしい再会 聴けなかった音楽会 >>