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ミーハー   

ravel: daphnisi et chloé, 2nd series, valses nobles et sentimentales
poulenc: concerto for two pianos and orchestra
debussy: prélude à l'après-midi d'un faune, la mer
melvyn tan, ronald brautigam (pf), yannick nézet-séguin / lpo @royal festival hall


ブルックナーの演奏において、わたしが神と崇める(っていつの間に?)指揮者、ヤニック・ネゼ=セガンさん。わたしの中では若手指揮者のナンバー・ワンなのです(噂のドゥダメルさんを去年聴き逃しているという負い目はあるんですけど)。カナダのフランス語圏の町、モントリオール出身の彼の多分得意とするフランス音楽(新しく音楽監督に就任したロッテルダム・フィル(ゲルギーの後任)とのデビューCDがフランスのオーケストラ音楽集なのです)のコンサートです。彼のブルックナー以外の音楽を聴くのはほぼ初めて(前々回はブルックナーの交響曲の前にハイドンのチェロ協奏曲を演りましたが)なので期待いっぱい胸いっぱい。さてどんな音楽会になるのでしょう。

始まりはいきなりラヴェルのダフニスとクロエの第2組曲。この曲、最後とっても盛り上がるので普通音楽会の最後じゃない? で、予想通りしっかり盛り上がりました。というか音楽が始まったとたんに惹き付けられました。雰囲気が一気にダフニスとクロエの世界に入ったんです。繊細な木管楽器の音色、雲を引くようなヴァイオリン。ゆったりとたゆたうように。ネゼ=セガンさん、本当にこういうゆったりとした表現が上手い。そして、和音を付ける声部の表現の巧みさ。全ての音が関連づけられ意味を持ち自律しながら音楽を創ってる。速い部分ではなんと若々しく弾けるんでしょう。ネゼ=セガンさんの大きく身体を使ったダイナミックな指揮振りも音楽をぐいぐいドライヴしていってとっても快感。この曲初めて生で聴いたかなって思わせるくらい新鮮でステキでした。
2曲目の高雅で感傷的なワルツは初めて聴きました。短い8曲の舞曲にそれぞれ特徴があってすらすらと耳に入ってきました。もともとピアノ曲を編曲したバレエのための音楽なんですね。優雅に踊るバレエを観てみたいと思いました(最近バレエにはまってます)。耳で聴くだけではちょっと物足りないかなぁ。でも、1曲目を含めてオーケストラがラヴェルらしい響きで演奏しているのにはびっくりしました。もともとロンドン・フィルは重くならない鋭い音系のオーケストラだと思うんですが、ネゼ=セガンさんのもとではブルックナーの音も出せるし、ラヴェルの音も出せるというのは、オーケストラの適応性も凄いし、オーケストラの能力を引き出すネゼ=セガンさんの力もただ者ではないんですね。
休憩前の最後はメルヴィン・タンさんとロナルド・ブラウティガンさんをソロに迎えてのプーランクの2台のピアノのための協奏曲です。音楽が始まったら、あっこの曲聴いたことあるって思い出しました。前にラベック姉妹のソロで聴いたんだった。あのときも楽しかったけど、今日も楽しかったです。特にタンさんがいつもにこやかに演奏して、この人ほんとに笑顔がきれい。音楽も楽しくて温かくて。ネゼ=セガンさんもときおりにっこりしながら指揮していました。プーランクの音楽がモーツァルトやいろいろな音楽へのオマージュになってることを思うとこの温かさはステキでしたね。

休憩の後はドビュッシー。大好きな牧神の午後への前奏曲と海です。実はわたし、ラヴェルは苦手、ドビュッシー派なんです。このふたり音楽の授業では印象派にひっくるめられてしまうのですが、作風は全然違うし、ラヴェルって印象派ではないんじゃない? まあそんなことはともかく。今日のロンドン・フィルもフルートの主席にはゲストの方が。カレン・ジョーンズ(karen jones)さん。ジョーンズさんのフルートで始まった牧神の午後もステキな演奏。なのですが。。。わたしは大好きなこの音楽を一瞬たりとも逃すことのないように耳と心を鋭がらせる。でも、これってこの音楽の聴き方としては間違ってる。微睡むような音楽世界に浸るには気持ちを柔らかくして心を微睡ませなきゃ世界を感じられないと思うんです。実際、CDで聴くときはぼんやりと夢うつつに聴くのが好き。しっかり聴こうと耳を鋭くすると音楽が遠ざかり、世界に浸ろうと微睡みの中に入ると音が遠ざかる。逃げ水のような矛盾。わたしはどうしたらいいのでしょう。頭が冴えてそんなことまで考えてしまったニンフに逃げられたわたし。
そして最後は海。ネゼ=セガンさんの演奏はゆっくりしている部分はゆっくりと糸を引くような表現や内声の丁寧な表現が相変わらずとっても上手くステキでした。速い部分でちょっと勢いに任せてしまったところがあったのが気になったけど、やりたい放題、オーケストラをぐいぐい引っ張っていくのはやっぱり気持ちがいい。ただいまの時点では、彼の相性はドビュッシーよりもラヴェルにあるのかな。ドビュッシーのちょっと冷めて外から見つめる視点が出てきたらいいなと思いました。彼の音楽の美点から見ると些細なことなんですが。っていうか彼の音楽が好き! あっ言っちゃった。

帰り際、階段をぼんやり下りていくとなんとなく空港の搭乗手続きカウンター見たくテープで道を作った迷路に入り込んじゃって、何かなと思ったらサイン会でした。えっ誰の誰の?って聞いたらネゼ=セガンさんのでした。ちゃっかりしっかりプログラムにサインをしてもらいました。CDの販促が目的なんでしょうけど、会場ではCDは滅多に買わないのです。というかこのところ年に数枚しかCDを買ってません。ネゼ=セガンさんって気さくな感じで、ファンの人が写真を撮るのにも「今いい顔してるかなぁ」なんておっしゃりながら笑顔を作って、高感度急上昇。ますますファンになりそう。今後の予定を聞いたら、来年はマーラーの交響曲第5番、再来年はブルックナーの交響曲第9番を演るそうです。楽しみ〜。
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by zerbinetta | 2010-02-10 00:48 | ロンドン・フィルハーモニック

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