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光子さん、かわいらしいっ   

haydn: symphony no. 97
mozart: piano concerto no. 17, k453
nielsen: symphony no. 4
mitsuko uchida (pf), sir colin davis / lso @ barbican hall


昨日はチューブで寝過ごしてしくじっちゃったので、今日はちょっと早めに家を出た。わたしの日頃の行いってほっんといいんですね。これがラッキー。家からバービカンに行く電車(1本でいけます)なんと、途中駅で人身事故があって止まっちゃったんです。なので、バービカンの方に行かない路線で先まで行って戻ってくるという(反対方向は動いているので)コースをとりました(うちのチューブ、途中で二手に分かれてまた合流するのです(ひとつはバービカン・センター、もう片方はコヴェント・ガーデンやサウスバンク・センターの最寄り駅を通ります)。遠回りになるので時間がかかるんだけど、ショートカットできる線は週末で止まってるかも知れないし、急がば回れでしょ。早めに出てきた甲斐あって(偶然だけど)、なんとかぎりぎり間に合いました。

ハイドンの交響曲は第97番。ハイドンは好きと言いながらもハイドンの交響曲はニックネームが付いてないとどれがどれだか分からないよね〜なんて言ってる似非ハイドニスト。第97番も初めて聴くように新鮮。こういう古典ものはやっぱりロンドン・シンフォニーが一番しっくり来るかなぁ。ロンドンのオーケストラの中では一番大陸の香りがするものね。コリン・デイヴィスさん(サー・コリン)の演奏は現代楽器のふくよかな音色を生かしたスタイル。あっひとつだけ、わたしの好みではティンパニはもちょっと皮張り系の音が好きかな。皮ゆるめ系のくぐもったどっしりした音で叩いていたので。

今日のお目当てその1は内田光子さんのピアノ。ロンドンで最も尊敬されてる日本人のひとりですね。光子さんはわたしも好きで、彼女のモーツァルトのソナタと協奏曲の全集のCD家にあったり(今も日本にあります)。それに音楽会でちょくちょく見かけるので、親近感大。モーツァルトのピアノ協奏曲第17番、おうちに全集があるくらいだから聴いたことあるハズなのにこれも全く忘れてる。
光子さんってステージの上では、こんな風に言うの、還暦を過ぎた偉大な芸術家に失礼かも知れないけど、とってもかわいらしい。なんだか無邪気な子供のよう。ほんとに純粋な方なのね。こんな感じは、アルゲリッチさんにも感じたことがあります。
オーケストラの音楽が始まったとき、光子さんはなにやら客席の方を見て、指をさす感じで子供にするようにダメダメをしていました。何があったんでしょうね。演奏中なのに写真を撮ろうとしてたとかかしら。おやおや音楽に集中しないのかしらなんて心配してたら、音楽が進むにつれてちゃんとしっかり音楽の中に入っていました。そして光子さんの奏でるモーツァルトったら。モーツァルトを弾く人は誰でも同じように言うと思うんだけど、モーツァルトって譜面づらはとっての易しいのに、譜面通り弾いただけじゃ音楽にならないから難しいと。もちろん、楽譜に音を足したり、強弱を変えたりとかしなきゃいけない、んじゃなくって、リズムの取り方とか息の仕方とか、言葉にできない魔法を振りかけることが必要なんですね。そしてその魔法が使えるのは、限られた人。光子さんもそのひとり。そして今日もとっておきのステキな魔法をかけてくれました。
光子さんのピアノはとっても柔らかな音色。とっても抑えめで、前に出ることなく絶妙のバランスでオーケストラと協奏するの。オーケストラが完全に光子さんの世界に融け合ってくる。そして、今日の一番のステキな魔法は、休符。この間の取り方が絶妙というか、ドキリとするような、一瞬心臓が止まっちゃうような、特に第2楽章は、まるでそこに新しい世界がぽっかりと開いたように初めて聴くモーツァルトの音楽。音はないのになんとステキな音楽がそこにあるのでしょう。こんなモーツァルトを聴けたなんて、わたしなんて幸せなんでしょう。モーツァルトの音楽も、長調になったり短調になったり、気まぐれなふしぎな魅力に満ちています。うんとステキな音楽でした。
演奏後は会場から溢れんばかりの暖かい拍手です。光子さんがロンドンの聴衆からとても愛されているのを感じました。
光子さん、かわいらしいっ_c0055376_753187.jpg


お目当てその2は、ニールセンの交響曲第4番「消し難きもの」。サー・コリンはロンドン・シンフォニーとニールセンのチクルスを演っているのよね。今日の演奏は録音されていずれCDになるようです。そのニールセン、正直わたしは戸惑いました。第1楽章が速いっ。なんか速すぎて、せかせかした感じがして、いろんな情報が失われてるんじゃないかって思ったの。オーケストラはよく付いていったと思うけど。もう少し堂々としていてもいいんじゃないかって思いました。もちろんそうして拠り所のない不安感を煽った表現をした、とも言えるのかも知れませんが。わたしとしては音楽への拠り所が欲しかったです。2楽章からは普通に楽しめたんですけど。そして、ステージの左右に振り分けられた2対のティンパニの競奏は、やっぱりいいですね〜。これは絶対生でないと味わえないだろうな。それにしてもこれだけ派手に盛り上がって、サー・コリンってもう80歳過ぎてるなんて信じられない若々しい指揮ぶりです。それにしても最近の80代って若いなぁ。マゼールさんも、ドホナーニさんもマズアさんも椅子なしで元気に指揮してるものね。すごいすごい。

by zerbinetta | 2010-05-09 07:51 | ロンドン交響楽団

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