愛(?)と感動のスペインの夜   

debussy: ibéria from images
lalo: symphonie espagnole for violin and orchestra
strauss: don juan
ravel boléro
christian tetzlaff (vn), christoph eschenbach / lpo @royal festival hall


今日はふふふ、またまたフランスものね、と思っていたら、スペイン特集でした。と言ってもスペイン人の作曲家は出てこないんですが。シュトラウスのドンファンが入っていなければフランスものと言ってもいいんだけど、今年から男女共学になった女子校にひとり入学してしまった男子のようにぽっつりと浮いてる。でもそういう状況だったらドンファン大喜び。エッシェンバッハさんとロンドン・フィルの音楽会です。
音楽はドビュッシーの「映像」から「イベリア」。ドビュッシーの管弦楽曲って牧神と、海と春と小組曲と神聖な舞曲以外の曲はどうも覚えられません。前に聴いたことがあったのにすっかり忘れてました。わたしの仄かな苦手意識が、そうさせるんでしょうか、オーケストラも最初はあんまり乗っていなかったような気がします。結構華やかなスペイン調の曲なんですけどね。

2曲目はラロのスペイン交響曲。実はヴァイオリン協奏曲。ジャンがコンクールで振った、ニ短調のあのどすーんどすーんって重そうな曲。なんですけど、ヴァイオリンのテツラフさんが、すっきりと晴れ渡る透明な青空のような音色でヴァイオリンを弾きました。どすーんどすーんのオーケストラとの対比が鮮烈。こんな演奏もあったのね、って目から鱗(最近落ちてばっかり)。こういう風に弾かれるとこの曲も悪くないかも(わたしもどすーんどすーんはお腹いっぱいになるので)。テツラフさんに座布団1枚。

休憩の後はドンファン。シュトラウスの交響詩のなかで極めてよく演奏される、指揮者にも人気で完成度の高いティルよりもこっちの方が好きなんです。で、四の五の言わずにすっかりと突き抜けて爽快な解放された音の演奏が好きなんです。そして今日の演奏はそれに近いものでした。近いと言って百点満点あげないのは、音が解放された爽快な演奏の理想がウィーン・フィルにあるからなんです。あの突き抜けた音色は(特にホルンの)、特別な楽器を使ってるウィーンのオーケストラにしか出せないのです。というあまりに意地悪な採点なんですが、エッシェンバッハさん、オーケストラの皆さん、わたしはしっかり楽しめましたよ〜。オーケストラも熱がこもってきた感じ。

そして最後はボレロ。音楽会の最後は大交響曲か何かで華々しく終わる、というのが定番なので、この短い曲で終わるというのはちょっと肩すかしを食らった感が始まる前あったんだけど、終わってみたらこれがまぁ興奮。プログラムに演奏時間が約14分と書いてあったので、わりと速めのテンポで演るんだろうなって予想していたら、まさしく予想通り、かなり速め。小太鼓の有無を言わさぬリズムと、メロディを吹く奏者のルバートで歌いたい気持ちの見えない緊迫があってエクサイティングです。そして、なによりも、その中心となるリズムの小太鼓のソロを指揮者の前に置いて、そして、エッシェンバッハさんは、最初に小太鼓に小さく合図しただけで全く指揮しない。各パートの入りを目で合図するのみ。最後の最後だけ指揮しましたがそれまでは一度だけティンパニを強調するところで右手を動かしただけで、後は気を付けの姿勢。これ、オーケストラの人はものすごく緊張するでしょう。何しろ小太鼓や他のパートを聴いて自分で合わせるしかないのだから。わたしも緊張しました。そしてその緊張感が興奮へとつながるんです。しっかりとリズムに裏打ちされた、ビート感溢れる音楽。そしてクライマックスに向かうただひとつのクレッシェンド。速めのテンポと相まってどきどきわくわく。身体の中からリズムがわき出してきます。全く指揮しなかったことで全く素晴らしい音楽を生み出したエッシェンバッハさん。これ、すごい勇気のいることだと思うんですよ。だって、指揮なしで自分の音楽を演奏させるんですもの。音楽は全くエッシェンバッハさんの意志で創り出されたものです(オーケストラとの相互作用によって)。特にティンパニの叩かせ方が格好良かった。凄いもの聴いた、と思いました。こういうときっておしゃべりになります。友達と興奮気味に今聴いた音楽を分かち合いました。
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by zerbinetta | 2010-05-22 06:36 | ロンドン・フィルハーモニック

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