フェミニンたって決して柔じゃない   

rossini: overture, the italian girl in algiers
mendelssohn: violin concerto
rossini: variazioni a più istrumenti obbligati
schubert: symphony no. 5
julia fischer (vn), iván fischer / chamber orchestra of europe @royal festival hall


フィッシャーフィッシャー、イヴァンとユリアの親子フィッシャー共演なんです。なんてね。他人ですよ。親戚でもない(ハズ)。イヴァンさんの方はハンガリーの方なので、本当は日本語と同じように名字・名前の順番なのでフィッシャー・イヴァンさん。ユリアの方はドイツ人。イヴァンさんを聴くのは数回目ですが、結構好きなんです。でも、彼が元我がナショナル・シンフォニーの主席指揮者になって2年で退任されるのでちょっと心配なんです。今年からエッシェンバッハさんが音楽監督になることはかなり前からの既定路線だったみたいですが。

まあそんな心配をよそに、今日の音楽会は(全然関係ないけど)テレビに録画されてたみたいです。テレビカメラが3台。もしかしてわたし映ってる?こんなことならちゃんとこぎれいな恰好をしてお化粧もして気取って来れば良かったかな、なんて柄にもないことを考えたり。オペラや音楽会のDVDを観ると、ちらりと観客席も映ってたりして、そこにたまたま映っちゃってたら嫌だな〜なんては思ってたんです。実は、前にナショナル・シンフォニーのシーズン・バウチャーの写真に写ってたことがあったので。な〜んて自意識過剰。ごまつぶみたいで、ここに座ってたのって覚えてなかったら本人でも見分けが付かないんだから。

今日は余計な話が多いね。オーケストラは、ヨーロッパ室内管弦楽団。このオーケストラ実はロンドンが本拠地なんですよ〜。ヨーロッパ中を飛び回っていてロンドンで演奏することは滅多にないんですけど。ここでは初めて聴きます。若者のオーケストラというイメジが強いのだけど、若者ばかりじゃないみたいです。でも音はフレッシュで瑞々しくぴちぴちした若さに溢れてます。そして、上手い。特にクラリネットがめちゃくちゃ上手かったです。
音楽会はロッシーニのアルジェのイタリア女の序曲から。ロッシーニってこういうぴちぴちとした音で演られるともう、無条件に嬉し楽しくなっちゃうんですね。あああ、序曲だけじゃなくて全部聴きたい。あの楽しいオペラが観たい。フローレスさんのリンドーロをまた観たいっ。そうそう、面白かったのはオーケストラの配置。ヴァイオリンを左右に振る対向配置だったんだけど、真ん中には弦を置かないで管楽器を並べてました。

2曲目はユリアのソロでメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲。ああ、またこの曲感ありあり。と言うわけで、全然期待してなかったんだけど、これがなんとステキだったこと。前に聴いた印象からユリアは骨太で、かっちりと全体を組み上げた演奏をすると思ったんですよ。ところがところが。なんて静かで穏やか、しっとりとしたヴァイオリン。音楽室のちょっとなよっとしたメンデルスゾーンの肖像画を思い出しちゃった。テツラフさんのごつごつした体育会系の男性的な演奏とは好対照。こういうのをフェミニンっていうのかな。でも、音楽は決して軟弱ではなくてしっかりと芯の入ったもの。とろけるような甘美さを売り物にした媚びた演奏とも一線を画して、少し孤独感を感じる静けさが印象的。とても感動したのは、第1楽章の第1主題が終わって第2主題に移るところ。ここでユリアはゆったりとテンポを落として、思いっきり静かに内省的に音楽を奏でたの。これがもうほんとに心に響いてきて、ああ、メンデルスゾーンの協奏曲ってステキだなって素直に感動しました。今までメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲ってきれいな曲だけど、感動系ではないな〜なんて思ってましたが、今日それが覆されました。最後の楽章のきゅるっきゅるっとかける速いポルタメントもステキ。ユリアの音楽によって表現を使い分ける懐の深さに感心。まだ20代半ばなんですよね。末恐ろしいです。

休憩の後は(オーケストラの配置は普通の対向配置になりました)またロッシーニから。名前を聞いたことのない珍しい曲。ショウ・ピースとして書かれた変奏曲。簡単な主題が第2ヴァイオリン、第1ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、クラリネットのソロ、オーケストラのトゥッティと受け継がれつつ修飾され変奏されていきます。ソロは立ってコミカルな仕草をしたり、楽しい音楽です。他愛もない音楽ですが、にこやかに楽しみました。ロッシーニ・ラヴ。

最後はシューベルトの交響曲第5番。まさにこのオーケストラの若い音色にぴったりの音楽。フィッシャーさんのテンポは遅めでしたが、オーケストラは停滞することなく溌剌とこの音楽を奏でてました。木管楽器の人たちが大きく体を揺すりながらリズムを合わせているのはステキ。そういえばあのオーボエの人、どこかで見覚えがって思ったら、バイエルン放送交響楽団の主席の人でした。ほんと、この曲はわたしを幸せにします。なんの憂いもない青春の音楽。世界がこんな喜びだけに満ちあふれていたらいいのに。

アンコールにはブラームスのハンガリア狂詩曲。フィッシャーさんと言ったらハンガリーですものね。EUのインターナショナルなオーケストラを得て地元色は薄れてましたけど、いいんです。ブラームスだってハンガリー人じゃないし。ああ、でもなんて幸せな音楽会でした。
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by zerbinetta | 2010-05-27 06:36 | 海外オーケストラ

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