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鳴り響く声と音の饗宴   

massenet: manon
anna netrebko (manon lescaut), vittorio grigolo (chevalier des grieux),
christophe mortagne (guillot), russell braun (lescaut),
christof fischesser (le comte des grieux)
laurent pelly (dir),
antonio pappano / royal opera house @covent garden


マスネのマノン。同じ原作に基づくオペラは前にプッチーニのマノン・レスコーを観たことがあって、最後はアメリカの砂漠で水を飲むってなんだか訳の分からない展開になっちゃって、どうにもこうにもよく分からないので、行く前にあらすじを予習したのでした。でもそこでもよく分からなくって結局よく分からないままみたのですが、やっぱりよく分からないまま終わったのでした。マノンって??? そう、全くよく分からないのがマノンその人。タイトル・ロールなのにです。この人の性格付けがわたしにはどうしてもできない。わたしからみたら彼女は宇宙人? 多分当時、誰でも知っていた原作を読んでいればもっとよく分かるのかも知れません。でもその知識のないわたしにはさっぱり。共感して良いのか悪いのか。わたしがオペラ歌手だったらマノンの役は断るでしょう。だってどうしていいのか分からないんだもん。今回の演出では、マノンは始めウブな少女として描かれていたと思います。ネトレプコさんのお化粧も田舎娘感を出していたように思えたし。ウブというか男に対して免疫のない純粋な馬鹿? 女性版パルシファル? 一瞬のうちにデ・グリューと恋に落ちパリに駆け落ち(そんなことはあり得ないだろうと思うけど、これはオペラのお約束だからいいんです)。パリでデ・グリューと慎ましく生活。ところが幸せも長くは続かず、デ・グリューは父の手でさらわれ、ひとりになったマノンは貴族の愛人に。お金持ちの享楽的な生活を送るマノン。偶然出会ったデ・グリューの父親にデ・グリューのことを聞き、健気にもデ・グリューに会いに教会に出かけるマノン。そこで再び結ばれて新しい生活を始めるふたり。ここまでは分かるんです。でも、なぜマノンは恋人とふたりになれたのに享楽的な生活を捨てられないの? 愛があればお金なんてじゃないの? さっきはお金に任してマノンを誘惑しようとするギヨーをあっさり振ったじゃない。やっぱりマノンはお金の亡者? 愛なのお金なの、どっちが本当のマノン?って愛にもお金にも乏しいわたしは困惑するんです。最初と最後の彼女が純粋でいい人に描かれてるので、この真ん中部分の違和感はいかんとも埋めがたく。結局目先のものに追われるだけなの?だとしたら最後の改心は嘘?

という物語なんだけど、それでもいいのは音楽が圧倒的にいいから。オペラの魔力よね。つまらない台本でも音楽の力でもうそれはそれはステキなオペラに仕上がる。もちろん反対に素晴らしい原作なのにオペラの台本にしたらつまらないことこの上なしになっちゃったりもするんだけど。この場合は、原作を読んだことがないから確かなことは言えないけど、原作がずいぶんと人気があったことを考えると両方かもね。原作を壊して音楽で復活させた、みたいな。マスネってあんまり聴いたことがなかったけど、知ってるのはウェルテルとタイスの瞑想曲くらい(?)、ぐいぐいと煽り引き込んでくる音楽はそれだけで十二分に楽しめる。パッパーノさんとオーケストラものりにのって音楽を演奏している。そして、その上に迫力のある合唱、素晴らしい歌手陣。

ネトレプコさんは産休後、初めてだったけど、ちょっと太ったけど、声はもうほんとに絶好調。ハーゲンダッツのアイスクリームが大好きな彼女ももう完全に大スターの風格。声は張りがあって低音から高音まで完璧にコントロールされていて言うことなし。こんなにも声が出たら本人ももうすかっとしてるでしょう。若い頃はもう少し線が細かったような気がするけど、今はもうドラマティックなものでも何でも歌えそう。演技も上手いし、向かうところ敵なしのソプラノですね。そして絶好調がもうひとり。デ・グリューのグリゴーロさん。初めて聴く人。今回がロイヤル・オペラ・デビューなんですね。この人むっちゃすてきだったの〜。凄すぎ〜。惚れたわ。この絶好調のおふたりが圧倒的な歌の力で舞台を引っ張るものだから、他の歌手も合唱も巻き込まれて舞台は凄いことになってました。大きなオペラハウスでの声とオーケストラの饗宴。物語なんてそっちのけで音楽の交響的な世界に浸ってました。おふたりが顔を寄せ合って歌ってるところなんてお互いにうるさくないのかな、なんて余計な心配をしながら。

こんな圧倒的な音楽を聴いたあとはなんだか放心してしまって思いっきりカタルシス。こういうことがあるから音楽会通いは止められません。

フランスのオペラはバレエも入ってサーヴィス満点
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ヴィットリオ・グリゴーロさん
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アンナ・ネトレプコさん
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by zerbinetta | 2010-06-25 01:54 | オペラ | Trackback(2) | Comments(4)

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Tracked from ロンドン テムズ川便り at 2010-06-28 14:46
タイトル : ロイヤル・オペラ・ハウス 『マノン』
 私にとってのアンナ・ネトレプコ嬢初体験でした。    さすが、現代オペラ界のス―パスター。貫禄がすごかったです。登場するだけ、舞台にいるだけでステージが輝いて見えます。こういう人をスターというのだと、嫌が応でも認めざる得ない存在感があります。歌...... more
Tracked from ヴィットリオ・グリゴーロ.. at 2010-06-28 15:59
タイトル : Vittorio Grigolo マスネ作曲《マノン》で..
◎ガーディアンからもう一つレビューが出ました。大成功のロンドンデビュー.....並ぶもののいないニュー・スーパースター...(2010.6.27)◎記事にも追記しましたが、フィナンシャルタイムズのレビューも掲載されました。「演出は成功しているとはいえない....再演するような演出ではないが、ネトレプコとグリゴーロがいる限り、ハリウッドを超えるオペラの魅力がある.....」というようなレビューです。つまり、この《マノン》はネトレプコ&グリゴーロあっての《マノン》だそうです....ROH来日公演もあります...... more
Commented by かんとく at 2010-06-28 14:49 x
TBありがとうございました。それにしても素晴らしい舞台でした絵ね。もう一度、行ってみたいと思っており、リターン狙いを計画中です。
Commented by keyaki at 2010-06-28 16:07 x
はじめまして。
ヴィットリオ・グリゴーロのネットで追っかけブログを開設してる者です。
こちらの記事をリンクさせていただきまして、TBもしましたので、不都合がございましたらお知らせください。
映像じゃないのが残念ですが、10日のネット放送を楽しみにしています。
Commented by zerbinetta at 2010-06-29 05:21
かんとくさん、こちらこそTB返しありがとうございます。
さっき、ロイヤル・オペラのサイトを見てみたら日曜日のチケットはまだずいぶんありそうですよ。高い席だけど。
あとは劇場に直接行って、売りたい人から買いたたくというのもありみたいです。隣に座った方がそうでした。
Commented by zerbinetta at 2010-06-29 05:29
keyakiさん、はじめまして。
コメント、TBどうもありがとうございます。不都合だなんて。めちゃ嬉しいです。
グリゴーロさんはほんとステキでした。追っかけたくなる気持ち、よく分かります。keyakiさんの前にも生グリゴーロさんが現れることを願っています。
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