夏。夜。風。そして音楽   

schreker: der ferne klang -nachtstück
korngold: violin concerto
mahler: symphony no. 7
leonidas kavakos (vn),
ingo metzmacher / deutsches symphonie-orchester berlin @royal albert hall


プロムです。前回のマーラーの交響曲第3番に続いて、第7番。昨日のゲルギーとワールド・オーケストラの第4番と5番を外して、マイナーな第7番。だって好きなんだもん。マイナーだけに客席には空席がそこここにありました。7、8割程度の入りでしょうか。アリーナ席は相変わらず満員でしたけど。
音楽会の始まりはフランツ・シュレーカーの歌劇、「はるかなる響き」からの夜曲。今日のプログラムは夜つながりですかね〜。シュレーカーは名前とその作品に「烙印を押された人々」というオペラがあるのを知識として知っているだけで、聴くのは録音も含めて初めてです。指揮者としてシェーンベルクの「グレ・リーダー」を初演した人でもあるんですね。初めて聴くこの曲がほんとステキだったんですよ。ドビュッシーのような響きもあり、シュトラウスの雰囲気もあり、繊細でとろけそうで、こんなステキな作曲家を今まで知らなかったなんて、わたし、人生を相当無駄にしたな。そして今日からは幸せ者。他の作品も聴いてみなくっちゃ。夏の縁側。スイカ。猫。カブトムシ。竹の虫篭。そんなイメジで聴いていました。

2曲目はレオニダス・カヴァコスさんを独奏に迎えて、コルンドルトのヴァイオリン協奏曲。この曲ってずいぶんマイナーな曲だと思うんだけど、なぜかこの曲を聴くのはロンドンに来て3回目。チャイコフスキーの協奏曲だってまだ1回も聴いていないのに(演奏されていないと言うことはないけど)、これってなにげにすごくない? カヴァコスさんの印象はとても知的で繊細な演奏をする人。わたしにはクレーメルさんのイメジがだぶります。まだ2回しか聴いたことないけど、男性のヴァイオリニストではかなり好き。音楽に引き込まれるというか、集中を促されるものを感じるのね。まあでも、この曲、結構のほほんとしてハリウッド的で(特に第3楽章)楽しい曲だからもっとくつろいで演奏してもいいかなっても思ったけど。
ここまでインゴ・メッツマッハーさんの指揮するオーケストラはとっても控え目。抑えめで演奏していました。最初の曲ではそれもいいと思ったんだけど、コルンゴルトの曲は、さっきも書いたようにもっと弾けちゃっても良かったんじゃないって思いました。もちろん、カヴァコスさんの解釈がそうなってはいないんですけどね。アンコールに「アラハンブラ宮殿の思い出」を弾いてくれました。これむちゃくちゃ難しいでしょう。トレモロのメロディに伴奏の刻みが入って、よくもまあきちんと音が出るんだろうって思いました。これ弾くの勇気いりそう。わたしの方がドキドキしてしまいました。

コンサート・マスターの人(中国人)と握手するカヴァコスさん
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休憩の後は、マーラーの交響曲第7番。夏の夜にはぴったりの音楽ではないでしょうか。今日はあいにくの雨ですが。大好きな音楽なので(中学後半から高校を卒業する頃までマーラーの中で一番好きな曲でした。2番目はこの間の第3番)、つい身を乗り出して聴いてしまいました。出だしはほんとに緊張しますね、ってわたしが演奏するわけじゃないのに。でも、始まりは、う〜んなかなか良いけど普通な感じかなぁ。今どき誰でもマーラーはそつなく演奏できるからなぁって失礼なことを考えていました。ところがちょっと聴き進むと、なんだかステキな気配が。普通に演奏している振りして、実は巧みにテンポを変えたり、強弱の表情をこまめに付けたり、実はさりげなくとっても凄いことになってる。極端ではなく音楽が自然なので聞き流すところだった。最初に気がついたのは、音の終わり方(抜き方)。これが実に巧妙で上手いの。どこまでが主役かよく理解(わか)って、音を保ってる。それから音の出だし。ほんと音の出し入れが巧みなので複雑な音楽がすらりと聞こえるし、ちゃんといろんな音がいろんなところから聞こえてくる。あまり意識していなかった伴奏の和音なんかもときに前に出てきたりして。ぎりぎりまで抑えたピアニッシモ。ずいぶんしっかり練習してきたんでしょう。細かいところまできちんと意思の統一が図られていて、音楽がバラバラになることがないんです。一見、何でもない普通のものに見えるけど、見る人が見ると匠の技が施してある逸品のような演奏。ともすれば退屈になりがちな第2楽章とかも耳を澄まして聴かせてしまう吸引力。第3楽章のコントラバスのバルトーク・ピツィカートの鮮烈さ。メッツマッハーさんの音楽は、巧みな音の出し入れ、フレーズの中での細やかなクレッシェンド、デクレッシェンド、さりげないテンポの変化が特徴的だと思うんだけど、情に訴えるより、知に訴える、頭で聴くタイプなのかなって思う。わ〜〜っとやっちゃった〜っていう隙がなくて、ちょっとスマートすぎるきらいもあるけど、でもブーレーズさんのような冷たさはない感じ。その特徴が一番生きたのがフィナーレだと思うんです。ものすごく生き生きとして、お祭り感がちゃんとありながらも、勢いにまかせない知的な音楽設計が頭を刺激するのね。ずっと前に聴いた、バレンボイムさんの全く何も考えない脳天気に抜け切った演奏も好きだったけど、こういう脳みそを刺激する演奏もいいな。ただ、セレナーデは本来、頭で歌うものではないかもね。ああ、でもこの間の第3番といい今日といいなんてステキなマーラーを聴いたんでしょう。

わたしを指名する(ウソです)メッツマッハーさん
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by zerbinetta | 2010-08-10 07:34 | 海外オーケストラ

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