お誕生日音楽会   

25.03.2011 @royal festival hall

beethoven: piano concerto no. 3
strauss: ein heldenleben

mitsuko uchida (pf)
mariss jansons / bavarian radio so


お誕生日おめでと〜〜。ということで、内田光子さんとヤンソンスさん、バイエルン放送交響楽団の皆さんがお誕生日音楽会を開いてくれました。ヤンソンスさんとバイエルン放送交響楽団は去年も一昨年も聴いたけど、今が旬の若いフレッシュな(若い奏者が多い)オーケストラで、ヤンソンスさんもロイヤル・コンセルトヘボウよりもこちらの方が自由に音楽ができてる感じでわたしはこちらのコンビの方が好き。曲目は今日はベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番と英雄の生涯。

光子さんは、確かこの曲で今年のグラミー賞を受賞したと思うけど、ベートーヴェンの協奏曲を今、集中的に採り上げています。今シーズンから来シーズンにかけてロンドン・シンフォニーでもコリン・デイヴィスさんと全曲演奏する予定ですしね。その協奏曲。弦楽器のあと木管が主題を奏で始めたところでびっくり仰天。3つ目の一番高い音にもの凄いアクセント。あとで楽譜を見たらそうなってたんだけど、ここまで強いアクセントって。。。ときめくぅ。それにしてもこのオーケストラ、音がまろやかで角がなくてとってもきれい。そして木管楽器奏者の揺れること。へびつかいのように楽器を回しながら合わせてる。この人たちもこの間のベルリンフィルと同じ、指揮者じゃなくて自分たちで音を聴きあって合わせている感じ。自分たちが吹いていないときも他の人を見ながら音を聴いていたり、自分たちの音楽を聴いて楽しんでる。近くの席のひとと「うん」って言葉を交わしあったり、良い意味でアマチュアみたい。
光子さんもそう。この人本当に音楽が好きで、音楽を演奏するのが楽しくてたまらないというのが、聴いていてよく分かるの。この人も良い意味でアマチュア。音楽会の会場でも普通に聴きにいらしてる光子さんをよく見かけるしね。そして、本物のプロフェッショナルな芸術家。この人の演奏から彼女の音は聞こえない。音楽そのものが鳴っている。音楽の内面に深く切り込んだ演奏。でも決して冷たくならない、あたたかな小さな光りが灯っている。それはもう本当に心の内に染み込んでくるベートーヴェン。音のフェルトのような柔らかさにうっとり。第1楽章のカデンツァの後半で、えっこれ!シューベルトの音楽みたい!ってなんだか嬉しい発見があったけれども、光子さんの弾くシューベルトって本当にステキなんですよ。来シーズン、最後の3つのピアノソナタを弾いてくれるので、今からますます楽しみになってきました。光子さんのベートーヴェンは巨人の音楽ではなくて、あたたかなひとりの人間の音楽。だから、シューベルトの音楽が聞こえてきたのかも知れませんね。ほんとにステキな演奏でした。演奏後の光子さんの相変わらず可愛らしいこと。仕草のひとつひとつが本当に少女のようで可愛らしいの。かけっこするようなポーズでステージを降りていったり。このかわいらしさは光子さん、そしてアルゲリッチさんに共通してあるんだな。わたしも、ずうっとそんなかわいらしさを失わずにいたいな。

休憩の後は、英雄の生涯。皆さんは英雄というとどんな人を思い浮かべますか? 強くてカリスマ性があってでももの凄く怖ろしい織田信長のようなタイプ? ひとが考えつかないようなことを他人を上手に操作してやり遂げてしまう坂本龍馬のようなタイプ? ヤンソンスさんとバイエルン放送交響楽団の音楽は、そんな英雄ではありませんでした。とっても柔らかくて優しい。偉ぶるところがなくて、オーケストラの音は、南ドイツの丸みのある山と柔らかな日向を感じさせる音色。美音。例えばトランペットの普通なら耳に突き刺さるようなハイトーンも丸みのあるオーケストラの音の中に溶け込んでいるのです。英雄面していない英雄には好みが分かれるでしょう。でも、34歳の青年の等身大の姿がそこにあると思います。まだ、彼を彼にせしめたサロメもエレクトラもバラの騎士もアリアドネもない未来の英雄。シュトラウスの故郷バイエルンのオーケストラ。シュトラウスが見ていた景色の中で培われた音は、シュトラウスが聴いていた音でもあるのかも知れませんね。

アンコールはバラの騎士のワルツ。こちらはずいぶん気の置けない感じで、開放的でビアホールの楽隊みたい。雑だとかという意味ではなくて、シュトラウスがオペラに仕込んだワルツの意味を汲み取ったステキな演奏でした。ワルツってこうでなきゃね。

ふふふ、ステキな誕生日でした。もちろん、お誕生日コンサートなんて妄想の中ですよ。今日みたい日は勝手にお姫様気分でいさせて〜。明日から普通の貧民に戻りますから〜。
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by zerbinetta | 2011-03-25 09:12 | 海外オーケストラ | Comments(8)

Commented by G.G. at 2011-03-29 04:43 x
内田のグラミー賞は、クリーブランドとの弾き振りのモーツァルト23&24番ですな。
最近内田さんの演奏が肌にあうのか、弾き振りのモーツァルトは買います。
シューベルトは、冬の旅か水車小屋の伴奏盤、買おうかと模索してました。
Commented by voyager2art at 2011-03-29 04:49
つるびねったさんこんばんは。
お誕生日だったんですね。ちょっと遅くなりましたが、おめでとうございます。
この演奏会も気になっていたんですが、やっぱり良かったんですね。
内田光子さんは僕もベルリンフィルのグレートの回の演奏会で見かけました。彼女の演奏は実演で聴いたことがないので、来シーズンのシューベルトを楽しみにしています。
Commented by Miklos at 2011-03-29 10:11 x
こんばんは。確かに、「英雄の生涯」はカラヤンなんかの自信満々キザっぽい英雄とは違って、おおらかで素朴な感じでした。ヤンソンスの演奏がそもそも、小手先のごまかしをやらない誠実な音楽作りを心がけているんだなあといつも思います。
内田光子さんは当然のごとく英雄の生涯も最後まで聴いていて、終演後にやっぱりかけっこポーズで楽屋口に走っていって、速攻で舞台袖から顔をのぞかせていました。引き上げる楽団員を出迎えるためだったんでしょうか。いい人ですね。
Commented by YU at 2011-03-29 20:57 x
そういう事だったのですね!
遅ればせながらお誕生日おめでとうございます☆
素晴らしい1年になりますように。

またロンドンらしく、素晴らしい組み合わせの音楽会ですねぇ。
PCを壊したので暫く停滞状態が続きますが、癒しを求めてまたお邪魔させていただきます。
(日本では言えませんが小さな声で)
お米も、牛乳も卵も無くても全然平気でしたが、PCだけは辛いです(苦笑)
Commented by zerbinetta at 2011-03-30 08:57
G.G.さん、
あれれ、モーツァルトでしたか。でも第24番はこの第3番に似てるので許してね(強引)。光子さん、わたしも大好きです。モーツァルトもシューベルトもベートーヴェンも持ってたり(全部じゃないけど)。光子さんは、同じロンドン在住ということで、できるだけたくさん聴きたいなって思っています。来シーズンのベートーヴェンとシューベルトはむちゃ楽しみです。
歌曲の伴奏も良さそうですね。歌は誰ですか?
Commented by zerbinetta at 2011-03-30 09:02
voyager2artさん、
ありがとうございます。ずいぶん歳をとりました。
良かったですよ〜〜。ヤンソンスさんとBRSOはこれで3度目ですが、いつも良い演奏を聴かせてくれます。
光子さんはピアノがめちゃくちゃ上手い音楽好きのおばさまという感じですね。聴きにいらしているときは、完全に普通の観客ですし、ご自分でチケットを買って趣味でいらしている感じです。
来シーズンのシューベルトはマストですよ〜。ずいぶん先だけど。
Commented by zerbinetta at 2011-03-30 09:07
Miklosさん、
英雄の生涯はカラヤンが演るのとは全然違いましたね〜。あえて力強い英雄を避けた感じでした。実はヤンソンスさんの強面風のお顔が苦手なのですが(しかもムラヴィンスキーのアシスタントをしてたり、怖いイメジなのです)、音楽は本当に誠実でステキですよね。
わたしの席からはアンコールのときの光子さんが見えなかったんですけど、やっぱりお茶目だったんですね。サイン会には並びたかったんですが、最近弱っているので断念しました。お話ししてみたかったな。
Commented by zerbinetta at 2011-03-30 09:11
YUさん、ありがとうございます。
PC早く直るといいですね。わたしも何はなくてもコンピューターがないと生きていけないというか、暇になるかも。その方が健全かしら。わたしはご飯かコンピューターかと言われたらご飯をとるかな。お米がないと生きていけない日本人なの。
日本は今大変ですよね。皆さんが速く平常の心に戻られることを遠くから願っています。

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