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かわいいのに〜〜   

12.05.2011 @barbican hall

shostakovich: concerto for trumpet, piano & strings, piano concerto no. 2
tchaikovsky: symphony no. 3 'polish'

yefim bromfman (pf)
valery gergiev / lso


タコのピアノ協奏曲って、とっても個人的でくつろいだ音楽だと思います。外に向かって大きな声で叫ぶというより、小さな声で自分や友達に語る感じ。タコの素直な心の裡がちらりと音楽にも表れているような気がします。それは息子さんのために書かれた可愛らしい第2番だけではなくて、トランペットのソロと弦楽合奏の伴奏の第1番もそう。もちろんどちらもタコ特有のシニカルな面もちゃんとあるんだけどね。そんな協奏曲、一晩でふたつも聴けちゃうお得な音楽会です。しかもメインは別。ゲルギーとロンドン・シンフォニー、ピアニストはブロンフマンさんです。
でもね〜、ブロンフマンさんとゲルギー、かな〜りアクが強そうな巨体の男ふたり。かわいい系の曲が〜〜。
第1番の方は、オーケストラも薄くて、こちらの方がシニカルな感じも強いのでとても良い演奏になりました。トランペットを吹いたロンドン・シンフォニーの主席のコッブさんもめちゃ上手いし。トランペットは指揮者の横に立たせて、完全なソリスト扱いでした。トランペット協奏曲ではないのでお休みも多いのだけど、ソロの部分は音を伸ばすだけのところでもとっても重要で絶対なくてはならないし、しっかりと音楽に溶け込んでいるのですね。ブロンフマンさんも巨体からの余裕のある音で、タコの諧謔性をよく出していたと思います。とてもとてもステキでした。
それに対して第2番の方は、わたし、この曲めっちゃかわいいと思うんだけど、大きな男ふたりが、って大きさじゃないですね、演奏スタイル、このおふたり、この曲をとても立派に演奏しちゃったんです。ベートーヴェンのサイズのオーケストラに結構華々しく鳴るところも多いから、そういう演奏もありだと思うんですけど、わたし的にはもうちょっと軽やかに儚げなのが好みなんです。ときにいつも涙しちゃう第2楽章は、本棚、お人形、窓から見える月、みたいなフェミニンな感じで。わたしの一番は今のところ、10年ほど前に、ヘレン・ホワンさんが、マズアさんとニューヨークで弾いたもの。心にしみ通るような優しく可愛らしい音楽でした。今日は大きな音楽を眺めて心の外で敬服するような感じだったんです。圧倒はされたけど、わたしのではないなって。
ブロンフマンさん、2曲も弾いたから十分かなって思ったら、アンコールも弾いてくれました。多分ピアノのショウピースとして書かれたヴィルトゥオーゾふうの曲。一流のピアニストだから当たり前なんですけど、よく指が回る〜。

休憩の後はチャイコフスキーの交響曲第3番。ゲルギーとロンドン・シンフォニーのチャイコフスキー交響曲全曲演奏シリーズです。少なくとも前期の3曲は録音されてCD化されるみたい。気合い入ってます。そういえば、ロンドン・シンフォニーの第1リーダーのニコリッチさん、見るの初めてかしら。多分しばらくサヴァティカルかなにかでお休みしていたのかな。
チャイコフスキー・シリーズは交響曲を第1番から順番に演奏しているので今回は3回目(それぞれ2回ずつの音楽会があります)ですが、ゲルギーのアプローチは、抒情的に演奏されるときによくある緩さというかおもむきに流されるいい加減さを排して、音楽を構造的に作っていこうとするもの。前2作ではそのアプローチが少し裏目に出て、ちょっと音楽が面白くなかったんだけど(やっぱりチャイコフスキーにはとろけるようなセンチメンタリズムも必要)、今日の第3番では成功していたように思えます。
第3番ってとってもバレエ的。第1楽章なんてそのまま白鳥の湖の開始に当てはめてもいいくらい。暗く黙示的に始まって(ティンパニとコントラバスの静かな打ち込みがとっても効いてる)、幕が開くと同時にお城のお庭の華やかな音楽。お終いの楽章も白鳥の湖の第2幕の大広間の華やかな音楽そのもの。この交響曲でバレエ踊れそう。それがドライにはきはきした感じでとてもいいのね。中間の3つの楽章というかその最初の2つも適度にメランコリックで、でも過ぎずにちょうど良い感じ。バレエ組曲みたいで、わりとゆるい構成だと思うこの音楽にしっかりたがを締めて、ひとつの交響曲としてまとめたゲルギーの手腕はなかなかです。もちろん、ロンドン・シンフォニーもいつものように柔らかい音でクオリティーの高い演奏を聴かせてくれました。来シーズンの後期3曲もとっても楽しみになってきました。

by zerbinetta | 2011-05-12 23:39 | ロンドン交響楽団

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