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今シーズン前半の音楽会 その1 勢いのあるオーケストラ   

ロンドンにはフル・サイズのシンフォニー・オーケストラとしてメジャーなものが5つあります。どのオーケストラもすぐれた指揮者やソリストを迎えて演奏し、CDもたくさん出している世界でもトップ・クラスのオーケストラだと思います。それは、ロンドン・シンフォニー、ロンドン・フィルハーモニック、フィルハーモニア、BBCシンフォニー、ロイヤル・フィルハーモニックです。その中で最も上手いと思うのが、ロンドン・シンフォニーで次にBBCシンフォニーが続くと思うんですけど、でも、どのオーケストラもそれぞれに個性があってステキです。そしてわたしが一番大好きなのは、前にも書いたことがあるけれどもロンドン・フィルハーモニックです。なにしろロンドン・フィルの最近の勢いったら凄い。そして、これって今30代半ばの若い主席指揮者、ユロフスキさんの成長とまさに同時進行中。それが勢いのある原因のひとつです。
そのユロフスキさん、今シーズン前半は8回の音楽会に行ったのですけど、その半分を指揮しています。ロンドン・フィルの主席指揮者度はロンドンのオーケストラの中で1番高い。それが、指揮者とオーケストラの関係を緊密に保っているのですね。そして、ユロフスキさん、かなりオーケストラを締め上げてトレーニングする方にお見受けします。要求する音楽が高くて、妥協を許さずに完璧に仕上げてくる感じ。ぐいぐいと音楽を引っ張っていく若さがあって、それが、ユロフスキさんにもオーケストラにもとっても上手くいってるように思えます。客演する指揮者も多彩で、主席客演指揮者のネゼ=セガンさんも、ユロフスキさん同様に今一番充実している若手指揮者のひとり。他にも、エッシェンバッハさんとかヴァンスカさん等、常連の方たちも素晴らしい。
それに、何故かロンドンで一番人気のあるオーケストラなんですね。お客さんの動員数は、ロンドン・シンフォニーよりも多いと思います。ロンドン・シンフォニーでは、マイナーな指揮者、マイナーなプログラムでは空席が目立つんですが、ロンドン・フィルは意外と人が入ってる。これはちょっと不思議。マニアックなお客さんが付いてるってことかしら。わたしのようなクラヲタ御用達?

そんなユロフスキさん、今シーズンはとにかくマニアックなプログラムでクラヲタのツボを攻めてきます。開幕からして、ムソルグスキーへのトリビュートで、ムソルグスキーのマイナーな作品に、現代作曲家の作品を加えたもの。その次も、プロメテウス特集で、またまたマイナーなスクリャービン等、そして、多分今年から採り上げるブルックナーの交響曲、始まりは第1番でした。ロンドン・フィルって何故か、ブルックナーの交響曲の演奏が多いオーケストラなんですよ。昨シーズンまでにすでに、第6、7、8、9番と聴いていますが、何故か今シーズンは多くて、第1、4、7、9番と4回も音楽会があります。1シーズンに4回もブルックナーの交響曲が演奏されるなんて多すぎですよね。
今シーズン、ヴァンスカさんが採り上げた交響曲第4番はなんと1888年版。むちゃ面白かったです。

さあ、今シーズン前半のベスト音楽会のノミネートをしましょう。と、8回の音楽会を振り返ってみると、どれもステキに思い出されてしまって、1番が決められないのはわたしの欠点。そこを何とかがんばって、

印象的な作品演奏部門
ツィンマーマン、オーケストラ・スケッチ「静止と反転」 ユロフスキさん
ブルックナー部門(えっ?!)
交響曲第4番 ヴァンスカさん
たこつぼ部門
ショスタコーヴィチ、交響曲第8番 ズウェーデンさん

印象的な作品では、ツィンマーマンの作品の他にも、トランペット大活躍のピンシャーさんの「オシリスへ」や、アンダーソンさんの「ファンタジア」(どちらもユロフスキさんの指揮)もあったんですけど、圧倒的な名演奏と言うことで「静止と反転」が図抜けてました。
3回聴いたブルックナーは、どれも本当に素晴らしくて(特にエッシェンバッハさんの交響曲第7番の演奏は素晴らしかったです)、選ぶのが難しかったんですけど、エッシェンバッハさんのときはオーケストラに少し限界を感じてしまったし、ユロフスキさんの交響曲第1番は、まだこれからがあると思うので、めちゃくちゃ面白かったヴァンスカさんの交響曲第4番もどきを選びました。
タコは、これ1回だけだったんですけどあまりに名演。アグレッシヴな疾走感が圧倒的でした。
他にも、ユロフスキさんと古典の相性の良さを誇示した、ベートーヴェンの「アテネの廃墟」とモーツァルトのヴァイオリン協奏曲第5番(ソロはヤンセンさん)も素晴らしかったです。特に、モーツァルトへの適性を示した後者は今期の新しい発見。これからユロフスキさんのモーツァルトが楽しみになる音楽会でした。

で、ベスト音楽会を選ぶとすると、
9月21日のシーズン・オープナー ユロフスキさんの指揮とレイフェルクスさんのバリトンでムソルグスキー・トリビュート
10月26日 ズウェーデンさんの指揮、ブレハッチさんのピアノでショパンの協奏曲とタコ8
次点に
11月16日 ヴァンスカさん指揮、ヤンセンさんのヴァイオリンでチャイコフスキーの協奏曲とブルックナーの交響曲第4番
12月3日 ユロフスキさん指揮、ヤンセンさんのヴァイオリンでモーツァルトの協奏曲第5番、チャイコフスキーの「マンフレッド交響曲」

を挙げてこの稿を終わりたいと思います。選ぶの大変。ふうう。

by zerbinetta | 2011-12-27 14:29 | 随想

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