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音遊びをする人たち シベリウス、ブニアティシヴィリ、カラビッツ、BBC交響楽団   

24.02.2012 @barbican hall

sibelius: symphony no. 4
prokofiev: piano concerto no. 1
stravinsky: petrushka

khatia buniatishvili (pf)
kirill karabits / bbcso


BBCシンフォニーによるシベリウスの交響曲シリーズ、今日は第4番。重暗い感じの音楽なので、BBCシンフォニーの音色にぴったりだと思っていました。なので、とっても楽しみにしていた音楽会です。それにしてもこの曲が前プロとは。。。
指揮者のカラビッツさんは名前だけ聞いたことがある人。わたしは行かなかったけど一昨年(?)、ロンドン・フィルに客演しているはずだし、現在はボーンマス・シンフォニーの主席指揮者。35歳、ユロフスキさんやネゼ=セガンさん、ハーディングさんと同世代ですね。

その苦汁のようなシベリウスは、予想どおり、曲の重暗さがオーケストラの音色に合っていてにやり。曲とオーケストラの絶妙なマリアージュ。この音のシベリウスは良い! カラビッツさんは、ゆっくり目のテンポで、丁寧にシベリウスの音世界を築き上げていきます。オーケストラをとても良く鳴らして、もともと音量のあるBBCシンフォニーだけれども、すっきりと解き放たれたようにオーケストラが鳴って実に気持ちがよいのです。暗いけれども澄み切って透明な音楽。シベリウスの音楽って不思議な魅力がありますよね。特にこの交響曲第4番って、シベリウスの作法を突き詰めた感じがあって、旋律がとっても断片的で短くて、それが囁き合うようにそこここから聞こえてきて、彼が、流れるような旋律を紡いで音楽の物語を作っているのではないことが分かります。シベリウスは抒情よりも抒景的な音楽を書いてる。それは外の世界の景色の記述でもあるし、心の景色の記述でもあります。とっても客観的な音楽。交響曲第4番も暗い色合いだけど、悲しい音楽ではちっともなく、暗い森の音楽。森の中の音を、耳に聞こえたとおり、心に聞こえたとおり、音遊びのように音楽にしているよう。自然に対する畏怖の念を含めて。カラビッツさんとBBCシンフォニーは、そんなシベリウスの音楽を余すことなく正確に音にしました。とってもステキな演奏だったと思います。カラビッツさんとBBCシンフォニー、どちらにとっても充実した演奏だったのではないかしら。この客演がもう少し早くあったら、カラビッツさんが次の主席指揮者に選ばれてたかも知れないなんて思うほどに。もちろん、オラモさんもとっても素晴らしいので、甲乙付けがたいんですけどね。

今日のもうひとつの楽しみは、最近めきめきと頭角を現していると言うか、話題に上るブニアティシヴィリさんのピアノ。美人だから。いいえ、音楽もとっても良いのです。今まで2回(あれ?3回かな)、聴きましたが、曲と彼女の音楽がぴたりとはまったときの演奏はもの凄いんです。前に聴いたとき、リストとプロコフィエフのソナタがもうとんでもなく良かったので、今日のプロコフィエフの協奏曲はとっても楽しみでした。第1番の協奏曲は何故かあまり演奏されないし、初めて聴く彼女の協奏曲です。今日は背中の大きく空いたセクシーなドレス。美人さんだけに何を着ても映えるんだと思うんだけど、セクシー光線にくらくら。あわあわしているうちに音楽が始まって終わってしまったそんな感じ。正直に言うと、よく分からなかったんです。最初のリズムの繰り返しモチーフが、繰り返されるごとに力なく減衰していくようで、あれれちょっと大丈夫と思ったのが始まり(ここ、1回1回は減衰するけど、繰り返している間は緊張を維持ですよね。そうじゃないと音楽が推進しない)。ブニアティシヴィリさんは、ちゃんと弾けてたと思うし、力強いタッチはプロコフィエフの音楽だったけれども、ちょっとちぐはぐな感じ。わたしの脳みそがセクシー光線に当てられてヘンになっちゃってたせいかもしれないけど。
終わって、拍手を受けているとき、なんだか緊張が解けてよし!やった!という解放された表情をしていたので、もしかするとかなり緊張していたのかも知れませんね。ちょっとだけという指の仕草で、始めたアンコール。プロコフィエフの第7ソナタのフィナーレだったけど、これがもうたたみかけるようなアグレッシヴな音楽で素晴らしかった。この曲はリサイタルでも弾いてるし自信があるんでしょうね。掛け値なしに良かった。この人は、まだまだ演奏回数を積み重ねて良くなっていく人かも知れません。協奏曲も何回も演奏を重ねて良くなっていくのではないかしら。

お終いは、ペトルーシュカ。やっぱり、カラビッツさん、鳴らす鳴らす。ストラヴィンスキーが書いた、複雑な音たちを、どの音もちゃんと独立して聞こえてくるのだけど、楽譜を見透かすように精緻なバランスで演奏するのではなくって、他より大きな音を出せば聞こえる原理で、音を重ねていくの。こういうやり方をしたのは、ロストロポーヴィッチさんとかがいたんだけど、カラビッツさんもその系譜。だけど、うるさくならずにちゃんと全部聞こえるのが秀逸。オーケストラもみんなで気持ちよく音遊びしてなんだか嬉しそう。若くて溌剌とした音楽だし、音浴びして気持ちいい〜。カラビッツさん、ただ者ではないわ。これから要注目デスね。こういう人こそ日本のオーケストラに招聘して、じっくり音楽を育てていけばいいのに。

by zerbinetta | 2012-02-24 06:23 | BBCシンフォニー

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