巨匠の音楽 フィッシャー、デュトワ、ロイヤル・フィル   

30.03.2012 @royal festival hall

beethoven: violin concerto
strauss: ein heldenleben

julia fischer (vn)
charles dutoit / rpo


昨日アンスネスさんのリサイタルの行ったとき、今日ロイヤル・フィルハーモニックの音楽会があるのを見つけて、そういえば、ロイヤル・フィルちっとも聴いてないなぁ、と思って、安いチケットを買ったんです。シュトラウスもしばらく聴いていないから聴きたかったし。日本でおなじみのデュトワさんも久しぶりにお顔が見たいな。って言い訳?
そんなこんなで全然期待していなく、うっかり聴きに来てしまったこの音楽会。ふたを開けてびっくり。もの凄く良かった、というか近年まれに見る良さだったんです。デュトワさん、いわゆるマエストロになってるし、オーケストラもいきなりこんなに上手くなったの?とびっくりするくらい見事な変貌ぶり。この間、聴いたときは、こんなに上手くなかったよぉ。今日はロンドン・シンフォニーに勝るとも劣らない音でした。特に弦楽合奏の和音が見事にきれい。デュトワさんも、全く無駄のないシンプルな指揮でオーケストラを魔法にかけてる。N響は良い指揮者を持っていたのね。

今日の前半は、ユリア・フィッシャーさんのヴァイオリンでベートーヴェンの協奏曲。ユリアは、評判もいいし、とってもステキなヴァイオリン弾きだと思うけど、わたしとはあまり相性が良くなくて、それほど積極的に聴いている人ではありませんでした。今日も会場に行って初めて彼女が弾くんだって思ったくらい。思い入れが全くありません。心はもう後半のシュトラウス。
ところが、聴き始めてみてびっくり。彼女のベートーヴェン、深い内面まで音楽に切り込んでいく。音楽は途方もなく大きく雄大。決して大袈裟に弾いているわけではなく、むしろ、とっても抑えて静かに凛として弾いているのだけれども、音楽の捉え方が大きくて、まさに偉大なベートーヴェン。わたし、この曲ってベートーヴェンにしては柔らかく親しみやすい音楽だと思っていたのだけれども、彼女の演奏はそれに加えて、偉大と言っていいくらい深い。ちゃらちゃらと表面的な効果は全く眼中にはなく、真摯に音楽に対峙して対決している。何かを挑発するところもなく、何も足さない、何も引かない、まっすぐ真ん中な音楽。そして、音楽と演奏は止揚されてもの凄い高みに達している。名演。デュトワさんとオーケストラの伴奏もそんな彼女にピタリと付けて理想的な関係。ユリアの音楽に全員が乗りうつられてる。ベートーヴェンのこの曲が、こんなに凄い音楽だったとは、初めて知りました。ユリアのこと、完全に見直しました。若いのに(まだ20代)、大成した音楽家のひとり。今まで、どうして相性が悪かったんでしょう?今度はブラームスを聴いてみたいな。

もう前半だけでお腹いっぱい、大満足だったので、一転、「英雄の生涯」はおまけのような気持ちになってしまいました。これを聴きに来ていたのにね。
ところがまたまた予想に反して。わーなんというすかっとする演奏。若々しくて、音がとっても開放的で、そう、わたしの大好きなシュトラウスは、金管楽器、特にホルンのすかっと開放的な音なんです。朗々と吹くフォルテというか、音が大空の中に吹き抜ける感じ。それに、弦楽セクションが厚みのある良い音で弾いているので、シュトラウスの音の饗宴に浸れます。全くもう何がどうなっちゃったの?と思うほど上手い。かっこいい。音楽の作り方もドラマティックで、たっぷりとゆったりと聞かせる愛のシーン(英雄の伴侶)なんてもうとろけそう。そして、闘いにおける小太鼓の上手さったら。今日の圧巻は小太鼓といっていいくらい。リズムをリードするだけじゃなくて、音楽性を豊かに感じる絶妙な強弱で音楽をリード。まわりの打楽器の皆さんもとっても良くて、もっと闘っていて欲しい、びしびしと評論家なんかをやり返しちゃえなんて思いました。
それにしてもシュトラウスはこの曲を35歳で書いてすっかり回想しちゃうんだけど、だから、シュトラウスの偉大な作品群が回想されずに残念。だれか、サロメとか薔薇の騎士とかメタモルフォーゼンなんかも回想しちゃう、完全版を書いてくれないかな。でも、若さに満ちたアグレッシヴなのがこの曲の魅力なんですけどね。そして、この曲を最後にシュトラウスは交響詩を書いていない(交響詩的なものは2曲の交響曲)。シュトラウスが人生の転機で、決意を表明した音楽なのかも知れませんね。わたしの中にも何かみなぎる、それはなんだろう?喜びのようなもの?が湧いてきたのでした。
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by zerbinetta | 2012-03-30 20:14 | ロイヤル・フィルハーモニック

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