審査員になったつもりで作曲賞 2013年度武満徹作曲賞本選演奏会   

2013年5月23日 @オペラシティ・コンサートホール

小林純夫:the lark in snow
神山奈々:"close" to you to "open"
ホワン・リュウ:zwei landschaftsbilder
マルチン・スタンチク:sighs -hommage à frederyk chopin

工藤俊幸/東京フィルハーモニー交響楽団


今年の武満徹作曲賞の審査員は、この間個展を聴きに行ったサー・ハリソン・バートウィスルさん。今日はその本選の音楽会に行ってきました。4人のファイナリストたちの作品が演奏され、審査員のサー・ハリソンさんが、賞を決めます。最初から最後までひとりの審査員(毎年変わる)が審査する作曲賞。冠になってる武満徹は言わずと知れた日本の作曲界の重鎮だった人。世界的にも作品が演奏されていることに関しては、日本人作曲家の最高峰のひとりでしょう。と紹介しましたが、実は、わたし、武満の良さがあまり分かっていなかったり。。。いい曲もあるけど、たいしたことのない作品も多い印象。何でも書いた人だから。まあでも、それは置いといて、ここオペラシティのコンサートホールは、タケミツ・メモリアルとも言うのですね。天井が木組みでバンガローのように高くて、上を向いて眺めると気持ちがいい。天井の雨戸は開演前は開いてるのね。窓越しに青空が見えました。オーケストラには少し響きすぎる(イギリスの響かないホールに慣れてる人の感想)感じがするけど、居心地のいいホールです。ここで演奏されるなんて幸せ。しかもフル・オーケストラで。工藤さんと東京フィルの演奏は、とっても良かったです。きちんと楽譜にあるものを音にしていたと思います(楽譜にない解釈なりニュアンスを音にしないのはコンクールゆえかしら)。

プログラムは先日行ったコンポージアムのと共通なので、バートウィスルさんの評だけを読んで(作曲家のプロフィールと自分の作品について述べたものは飛ばして)、臨みました。審査員になったつもりで。でもね、わたし、前に、ブザンソン国際指揮者コンクールのセミファイナルだかを聴きに行って、審査して見事に外れた前科者。今回もきっと外すでしょう。でも、バートウィスルさんの評を読むと(スコアを見ての審査です)、書き方から見てどうやらスタンチクさんの曲が一押しらしい。これだけ、力入ってます。

さて、ひとつ目は小林さん(日本)の「雪の中の雲雀」。弦楽合奏と1本のフルートのための音楽です。フルートはソロで活躍するのではなく、静かに弦楽合奏に溶けて音色を変化させます。終始静かな音楽。弦楽器の特殊奏法(とはいえちゃんと弓で弦を弾いてます)で、かすれるような響きの音楽は、ラッヘマンさんみたく楽音より自然の音を出させるのかなと思ったらそうではなく、変わった儚い音色を要求しているゆえみたいです。とらえどころのない音楽と思っていたらなんだか居心地の良い安心感が。陰日向に、メロディが聞こえるんです。和声的できれいな。メロディのちらりズム。特に低弦にメロディが移ったときの安定感。メロディだけは通常の奏法で弾かれてるようです。吉松隆さんの音楽を思い起こさせるような感じの和声的なメロディです。それが、ふわふわと曖昧な特殊奏法の中に隠れていて。聴きやすい曲だったんだけど、ちょっと変化に乏しかったかな。お終いに近いところで、ヴィオラに特殊奏法ではない普通のロングトーンが出てきたときのドキドキ感がもっとあれば良かったのに。外国のトレンドはよく分からないけど、日本人としては武満や吉松さんで近しい部分もあるので、これがどう評価されるのか楽しみでした。

2つ目は、神山さん(日本)の「"close" to you to "open"」。日本語では何というのでしょう?あなたの近くで開いちゃう。あっ冗談ですよ!ヴァイオリンとピアノのソロに先導されて、大編成のオーケストラの賑やかな音楽。これも、無調の音楽と調性のある古典的な(ラヴェル的?)音楽の不協和の混合。調性のある音楽部分の元気溌剌な感じが良くて、やっぱり金管楽器なんかは、音階や倍音に沿った音を吹き鳴らすのが気持ちよいのよね〜なんて気にさせる。そして、今日一番の中国的。中国人のファイナリストいるのにね〜。調性部分は、なんだか、過去の作品のコラージュ(とはいえ何の作品が引用されているのか分からなかったし多分、引用ではなくて創作)みたいな扱いになったり、結構工夫されてた。最初ちょっといまいちかなぁって聴き始めたけれども、聴き終わって一番すかっとした。いまいちかなぁと思ったのはサー・ハリーさんがスコアを見て指摘されてたようなテンポ感。音は細かいんだけど、そこはもう少し先に進まないと(もう少し速度感が欲しい)という部分がちらほら聞こえました。でも、オーケストラを外連味なく開放的に鳴らせる技はたいしたもの。ただ、将来の彼女の作品リストの最初の方にこの曲が入ったとき、何となくスタンド・アローンな感じがしました。こういう方向で音楽を書くのかなって。あと、彼女は、映画音楽や劇場音楽に適正があるようにも思えました(素人意見です)。

3つめは。リュウさん(中国)の「zwei landschaftsbilder」。中国人の画家、呉冠中の2枚の絵に触発されて書いたそうです。呉がどんな絵を描く人なのか分からないので、何を表現しているのかはよく分からなかったです。音楽は、完全に無調のいわゆる現代音楽で、ある意味一番難しかった。とはいえ、大オーケストラを的確に鳴らす技量はたいしたものだと思いました。ただ、わたしにはちょっと変化に乏しいかなぁって感じました。この曲長かったし。でも、サー・ハリーさんは、予期しない方向へ常に流れていく、と書いてるので、聴く人が聴いたら変化があるのでしょう。

最後は、スタンチクさん(ポーランド)の「sighs -hommage à frederyk chopin」。いきなり予期せぬ音でびっくり。声(子音)を使ってる!小さめの編成のオーケストラで(コントラバスは3本(もしかすると4本だったかも)、金管楽器は1本ずつ)、でも、楽器叩いたり、息の音出したり、特殊奏法のオンパレード。でも、それらが雑音のようにならずにオーケストラの楽音としてちゃんと響いてくるのはさすが。この曲も調性のない音楽だけど、てきぱきとテンポ感があって、多彩な音色が楽しくて、金管楽器が場所を変えて吹いたりしてみてても楽しいし、ちょっとブルッときた。この曲が今日の4曲の中で、明らかな差を持ってわたしには一番よく感じられました。柔らかなマレットで一所懸命チューブラベルを叩くのがちっとも聞こえなくて、ちょっと技に走っちゃってるというのも若干感じましたが。経験の差がはっきり現れたような気がします(今日の4人の中で最高齢。他の人たちに比べて10歳くらい年寄り)。

そんなわけで、わたしの審査は、
1位 スタンチクさん
2位、3位 リュウさん、神山さん どちらが上か決めかねる〜。聴いたとたんはリュウさんの方がいいのだけど、神山さんのが心に残ってる感じ。
4位 小林さん

さて、サー・ハリーさんの順位は??
結果、今年の武満徹作曲賞は、
1位 スタンチクさん
2位 小林さん
3位 神山さん、リュウさん

でした。やっぱりスタンチクさんが、頭飛び出てたよね。小林さんの2位は意外。

と、自分も参加するように楽しみました!この4人が、これから活躍していく作曲家になるように願ってます。テクニック的な点では、みんなしっかりしてるし、個人が選ぶ賞なので、審査員の好みが最終的には決め手になってしまいます。だから、1位になれなかったといって劣っているっていうことはないので自信を持って音楽を作っていって欲しいです。
来年は、エトヴェシュさんが審査員。どんな作品が、賞を取るのでしょう。ただだしわたしも応募してみようかしら。と悪い冗談を言いつつ、年齢制限にしっかり引っかかってるのでした。

<追記>
サー・ハリーさんの講評がこちらに出ています。ものすごく的確で納得させられるものです。
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by zerbinetta | 2013-05-26 00:11 | 日本のオーケストラ

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