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アマチュアのマーラーの最高峰のひとつ(?) TAMA21交響楽団創立20周年記念公演   

2013年10月14日 @府中の森芸術劇場・どりーむホール

マーラー:交響曲第3番

菅原章代(メゾソプラノ)
和の会女声合唱団、ゆりがおか児童合唱団
現田茂夫/TAMA21交響楽団


参りました。すごく良かった。アマチュア・オーケストラのなし得る最高のマーラーの演奏のひとつじゃないかしら。

わたしは2ちゃんねらーじゃないのだけど、検索でときどき引っかかったときに2ちゃんねるのスレッドは読むことがあります。そこにTAMA21交響楽団のことが書いてあって、好悪取り揃えていろんな意見が、まああまり内容ないんだけど、2ちゃんねるの常で、悪口が多いかな。そこからのわたしのイメジは、腕利きのアマチュアを釣り上げて集めて短い練習時間で音楽会をするプライドの高いオーケストラ。音楽大学出の若い人が多いんだろうなって勝手に想像してみました。
でも、百聞は一見にしかず。
全然違うじゃない。
まずメンバーが若くない。といったら語弊があるのだけど、40代50代の人もたくさんいそうだし、若い人ばかりのオーケストラではなく、いろんな世代にまたがってる。このオーケストラ、前身は多摩が東京に編入されて100年の記念のために1回限りの特別オーケストラとして作られたんだけど、それがずっと続いて20年。今日は20周年の記念公演。オーケストラの成人式ですね。長く続けてこられたことは、アンサンブルにもしっかり表れて、非常に成熟したアンサンブル。これは一朝一夕ではできないよ。2ちゃんねるから膨らんでいたわたしの想像はすっかり覆ってしまったのでした。

どのパートも穴なく良かったんだけど、特に特に素晴らしかったのが、第1楽章のトロンボーンのソロ!それに第3楽章のステージ裏でのポスト・ホルン(多分コルネットで代用?トランペットの人が吹いていました)。アマチュア・レヴェルを遥かに超える上手さ。1楽章のチェロとコントラバスの速い音符もきっちり揃っていてびっくりした。

現田さんのマーラーは、緩急を付けたりするものの、流れを重視した演奏。アマチュアのオーケストラからこれだけの音楽を引き出す手腕はなかなか。無理をさせることなく安定感のある音楽作り。正直、この長い曲、途中で飽きちゃうかなって心配してたけど(長いなぁって思った演奏あります)、最後まで集中して聴けて嬉しい。
第1楽章はそれぞれの場面ごとにほぼインテンポで、盛り上がる1歩手前でときどきさらりとテンポを落とすのだけど、大仰になりすぎないところが、気持ちの流れを先へ先へと進めていくのが、若々しくて気持ちよいのです。峻険な山を目に浮かべることはできなかったけど、とても気持ちのいいピクニック。ザルツカンマーグートでマーラーが見ていた山って、インスブルックやスイスのアルプスのような烈しく険しい山じゃなくて、丸みを帯びた柔らかい山だよね。
第2楽章の雰囲気もそんな、牧歌的な自然の感じ。府中までとことこやってきたわたしの気分にぴったり。第3楽章も、暗い森のちょっと妖しいものが潜む感じじゃなくて、開けて明るい。おにぎり持って(おかずはウィンナと卵焼き!)、遠足にきた感じの音楽。とっても軽やか。そう言えば、むか〜し野原に寝っ転がってウォークマンでこの曲を聴いたことが思い出されました。さすがに金管楽器は、ちょっとお疲れ気味でした。
第4楽章は、ちょっとつるりと行き過ぎたかなぁ。さすがにこの薄いテクスチュアの音楽を上手いとは言えアマチュアで聴かせるのは難しいかなぁ。でも、全体の音楽の中にはちゃんとまるくはまっていましたよ。
第5楽章の合唱は女声も子供も良かったです。子供の声が、プロ(セミプロ?)の少年合唱団の声のようにこなれてなくて、子供らしいナイーヴな声だったのがかえってステキでした。合唱と歌のソロは、第4楽章が始まる前に入れたんですけど、これは、第1楽章のあとに入れて欲しかったです。マーラーは第1楽章のあとに長い休みを置くことを念頭に置いていたし、第2楽章から最後まではある意味ひとつながりの音楽だから。第1楽章のあとなら拍手が入ってもいいと思うんですよ。それから、合唱を座らせるのは第6楽章が始まって盛り上がったところで、が良かったな。解釈の違いかも知れないけど、第5楽章の終わりと第6楽章の始まりはひとつながりだと思うから。
大好きな第6楽章は、わたし的にはもっと感情の引っかかりが欲しかったです。速めのテンポで、すらりと。たいていの演奏でがくんとテンポを落とすチェロの旋律が出てくるところもそのままインテンポで、そのかわり(?)音楽が盛り上がる手前の区切りでテンポを落として、溜めをとるんだけど、もう少しうねうねと音楽を歌わせる方がわたしの好みかな。わたしにとって泣く音楽なんだけど、今日は最後まで清々しい思いで聴いていました。それにしても、金管楽器も息を吹き返して、最後まで途切れることなく吹ききった、奏しきったのはお見事。最後のダブル・ティンパニがずれていたのはお愛嬌。とてつもなく充実した良い演奏でした。

多摩はちょっと遠いけど、また聴きに来たいな。次は30周年に向かって、ますます充実した音楽ができますように。良いオーケストラへのさらなる成長を期待してます。

by zerbinetta | 2013-10-14 23:52 | アマチュア

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