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カルフォルニア・ロールなベートーヴェン、もしくはたらこスパゲティー・モーツァルト   

今や世界は(といいつつ主に欧米)、日本食ブーム。少し大きな都市なら、日本食レストランはたいていあるし、「ワタシ、ニホンショクダイスキデース」と言う外国人で溢れてる。でも、たいていは地元の嗜好に合わせたなんちゃって日本食。日本で食べるのとほとんど同じのを食べられるのはスタッフが全員日本人っていう高級店にほぼ限られちゃう。多分、反対も真。日本で食べられている外国料理は、たいていは日本人の舌に合わせてる。お客さんのほとんどは日本人だし、どんなにがんばっても全部本国と同じ材料を常に手に入れるのは難しいから。
音楽、特に集団のオーケストラとか、言葉が肝になる歌手とかも同じだと思うの。日本人が演奏する、西ヨーロッパのクラシック音楽ってヨーロッパの人が聴いたら、なんちゃってクラシック。酷いこと言ってるような気がするけど、
外国のオーケストラが演奏する武満徹の音楽って、どこかしっくり来ないよね、日本的な曖昧さがなくなってるみたいな。なんて、無意識に言っちゃったりときどき聞くよね。ということは、日本のオーケストラが演奏するベートーヴェンは、ドイツの人からみるとどこかしっくり来ないに違いない。武満の方がよっぽど国際的な作曲家だから、況んやローカルなベートーヴェンをや、だよね。食べてるもの違うし。

でも、だから、日本のオーケストラで本物(?)のクラシック音楽は聴けない、なんて言ってるのではないのよ。
だって、その国でなんちゃって外国料理が好まれてるのには理由があるはずだし、本物の外国料理が好きって胸を張って言える人はほとんどいないんじゃない。っていうか、本物に親しんでる人ってごくわずかだというか、本物って知らない人が大多数。音楽も同じ。いったいどれくらいの日本人が、「本物」のベートーヴェンを知っているのでしょう?ベートーヴェンの国に住んで日常的に地元のオーケストラの演奏を聴いているのならいざ知らず、いくらフルトヴェングラーのCDでベートーヴェンに精通していても、決して「本物」が分かるとは言えないもの。CDには音しか入ってないんだから。日本で本国から来るのオーケストラでベートーヴェンを聴きまくっていても、それは「本物」を本当に知ることにはきっとならない。日本でもウォーカーズのショートブレッドは買って食べることができるでしょうけど、それは、イギリスでそれを食べることとは感覚が全然違う。これはもうどうしようもない。

っていうか、「本物」ってあるの?
わたしは、カルフォルニア・ロールが大好きだけど、これって江戸前寿司ではないけれども、外国が生んだお寿司の傑作だと思うんです。そういう意味では「本物」を超えた(言い過ぎw)というか「本物」だと思うの。
外国でだって、文化の違う環境でだって、本物以上にステキな音楽は、注意深く大胆に、意識を持ってなされれば生み出すことができるはず。そういう音楽を日本のオーケストラに期待したいのです。
日本人の好みに合った和のテイストの入ったベートーヴェンがあってもいいと思うんです。そんなことを言うと、権威のあるクラシック音楽ファンからは白い目で見られそうだけど、日本のオーケストラの多くはそういうものを目指していった方が良いんじゃないかなって思います。そしてそれが、カルフォルニア・ロールが世界を席巻して、さらにUSから日本に入ってきてお寿司屋さんのメニュウに定着したように、日本風のベートーヴェンがいつか本国でも評価されれば嬉しいなって思うんです。だって、ベートーヴェンの音楽は、時代を超えて国境を越えて生きてるんだもの。
大事なことだから繰り返して言うけど、日本のオーケストラ(の多く)は和のテイストを生かした音楽を目指してみるのがいいんじゃないって、今のわたしは思います。

(音楽の「本物」問題はわたしの中で揺れてるのであっさり意見が変わるかも知れないけど・・・)

by zerbinetta | 2013-11-05 23:43 | 随想

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