人気ブログランキング | 話題のタグを見る

超ハッピー アントネッロ最強!「オルフェオ」   

2013年12月4日 @川口リリア音楽ホール

モンテヴェルディ:音楽寓話劇「オルフェオ」

彌勤忠史(演出、メッサジェーラ)
黒田大介(オルフェオ)、高山潤子(エウリディーチェ、ムジカ)
大澤恒夫(カロンテ)、鹿野浩史(アッポロ、羊飼い)
上杉清仁(スペランツァ、羊飼い)、酒井崇(プルトーネ、羊飼い)
中本椋子(プロセルピーナ、妖精、バッカスの巫女)、藤沢エリカ(妖精、精霊、バッカスの巫女)
新海康仁、白岩洵、望月忠親、細岡ゆき(羊飼い、精霊)
濱田芳通/アントネッロ


モンテヴェルディのオペラ「オルフェオ」(音楽寓話劇というのはまだ当時、オペラという言葉がなかったから。オペラです)、もう好きで好きでたまらないのです。しかも、今日は前回の「ポッペアの戴冠」でも暴走しまくっていた濱田芳通さんのアントネッロ♡嬉しくて嬉しくてスキップして音楽会場まで行っちゃう勢い。モンテヴェルディの3つのオペラの上演シリーズの第2回目なのです。チケットは当日券まで完売。満員御礼です。そして、またやってくれました。最高にステキで楽しい「オルフェオ」。悲劇だから楽しいというのはおかしいかも知れないけど、でも、アグレッシヴな音楽は、心躍らされるように楽しい。ロック魂ふたたび。帰り道では、スキップどころじゃなくて全速力でマイムマイム踊っちゃいたくなる気分。

記念すべきオペラ。史上初めてのオペラではないけれども(確か6作目くらい)、演奏されている最古のオペラ。現代に直接つながる音楽の根っこ。その記念碑の音楽が、まさに新しい時代を告げるにふさわしいトッカータ、モンテヴェルディの後援者であるゴンガーザ家の紋章のファンファーレになって煌びやかに響く。とびっくり。ファンファーレを導くタンブレロのビート!心臓に直接作用してワクワクしちゃう。いつものファンファーレがこのビートのおかげで5割増し。最初っからやってくれるね〜アントネッロ。濱田さんの指揮(たまにリコーダー、たまにコルネット)も足を上げたり完全に踊り。今回もセミ・ステージドで、オーケストラは舞台の上、オーケストラの前と、後ろの舞台で歌手が演技するんだけど、濱田さんの指揮が音楽の、舞台の一部に絶対なってるので、オペラ・ハウスのようにオーケストラがピットに入って見えなくなるより絶対いい。それに、このモンテヴェルディのオーケストラ、普段目にしないいろんな楽器が使われるので目にも楽しいし。ノリノリの太鼓のふたりもロッカーみたいでかっこいい。

演出は彌勤さん。前回の「ポッペア」みたいな過激な読み替えはしていないけど、舞台は、古代南米。ギリシャ神話のお話を、日本人が西洋人の衣装でやると違和感があるというので、南米に舞台を置き換え。でも、この死んだ妻を取り返しに黄泉の国に降りて行って、帰りに振り返って全てが泡になる、という話は世界中にあるので(日本の古事記にも!)、違和感はなく、すらりとはまりました。でも、そこが反対に物足りなさが残ったかな。プログラムノートの中に、この物語の言葉の裏に修辞学的にエロティックな暗喩が隠されていることが書いてあったけど、ならば、物語の筋を日本では知られている伊弉諾伊弉冉の話に託しちゃって、自由になった分をエロティックな後ろの意味を露わにするやり方もあったんでは、と思いました。南米にしたのがあまりに違和感なくはまっていた喉ごし良さの物足りなさゆえの逆説ですけどね。

濱田さんとアントネッロの音楽は、期待通り自由で弾けていて心躍りまくり。現代に甦るオルフェオ。当時の人がこのオペラをワクワクしながら聴いたように、今のわたしたちもノリノリでワクワクしまくり。昔の演奏方法にはなかった音も聞こえるけど、それが予想外でびっくりするような効果を上げて、音ではなく音楽の精神を今に甦らせることに成功してると思いました。みんな自由で上手い。ライヴならではのアンサンブル。最初から最後まで嬉しすぎて涙が止まらないわたし。

歌手陣も粒が揃っていて、一体となって素敵な音楽を聴かせてくれました。エウリディーチェは、最も出番の少ないヒロインな感じだけど、ムジカも兼ねた高山さんがとても良かったです。そして圧巻だったのが、メッサジェーラを歌ったカウンター・テナーの、そして演出の、彌勤さん!物語を支配する圧倒的な存在感が声にありました。全幕を通して歌いまくりのオルフェオの黒田さんは、速いところで音が消えるような感じがあったとこがちょっと残念だけど、難しい役をがんばって歌ってらっしゃったので、音楽に疵を付けるものではありませんでした。
客席に合唱が仕込んであって、突然歌い出したのも嬉しい驚き。制限された舞台、会場での効果的な演出、音楽の作り方はやっぱりいいな。こんな高水準のモンテヴェルディを日本で聴けることがもう嬉しくてたまりません。日本にもバロック・オペラや古楽の音楽に適したオペラ・ハウスがあればいいのに。そして、アントネッロにもどしどし海外進出して欲しいです。もうすでに海外でも絶賛されてるようだけどもっともっと。日本の宝物のようなユニークな古楽アンサンブルですから。

このシリーズはあと、「ウリッセの帰還」を残すのみ。最後はどんな舞台、音楽になるのでしょう。そして、その後のアントネッロの活躍はいかに。目が離せませんですね。

by zerbinetta | 2013-12-04 12:26 | オペラ

<< 僧形の音楽 わたしのポゴレリチ... マーラーの青春は熱くなきゃ 葛... >>