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爽やかな春 長尾春花 ベートーヴェン・Vnソナタ・シリーズ第2回   

2015年6月7日 @東京藝術大学第6ホール

ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第4、5番

長尾春花(ヴァイオリン)
鳥羽亜矢子(ピアノ)


応援しているヴァイオリニスト、長尾春花さんの学内リサイタル・シリーズ。ベートーヴェンのソナタ、全曲演奏会の2回目。今日は4番と5番の2曲。5番は有名な「春」ですね。

第4番は、短調の曲。じりじりとした焦燥感のある第1楽章の積極的な表現、少しやんちゃさが前に出た演奏で、リピートのあとの変化とか、とても細やかな配慮で弾かれていました。ピアノが主体で、それにすうっとかわいく絡んでいく第2楽章は、後半の「春」でもそうだったんだけど、ピアノの裏に回ったときのバランスがとても良くて、ピアノの鳥羽さんとの高い親和性がなかなか。生徒と先生のデュオではなくて、ふたりの対等の音楽家に成長できているのが良い感じ。ベートーヴェンの音楽の方も、ここへ来て、ピアノ主体からピアノとヴァイオリンが対等に会話する音楽になりつつあるのもヴァイオリン・ソナタのステキ度を上げているんですね。

「春」は、(多分)春花さん自身の解説に書かれていたとおり、「多くの奏者によって演奏される機会の多いこの作品は、色々なテンポで演奏されがちだが、ベートーヴェンの書いた拍子や表示から改めて解釈し、より納得のできるテンポ」、爽やかなテンポ感がステキでした。とても楽しい春。音楽に翳りが差す部分も、雲が流れるようにさあっと晴れて、ほんとに気持ちいい。何かを足すのではなくて、音楽を素直に表現したらこうなったというとても自然な長尾さんの解釈に、いろんな演奏を聴いたあとでも共感できる吸引力を感じました。晴れやかな気持ちが胸に残って音楽会をあとにできるのってほんとに幸せ。

前回の若書きの3曲に比べて音楽が充実してきて、それが表現のしやすさにもつながってくるのだろうけど、春花さんと鳥羽さんのベートーヴェン・ソナタの旅、次回は、また地味だけど、実はとてもかわいらしくて大好きな曲たちなのでとても楽しみ。

by zerbinetta | 2015-06-07 01:29 | 室内楽・リサイタル

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