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踊らな損損 下野/都響 コダーイ、グリーグ、ドヴォルザーク   

2015年9月2日 @東京文化会館

コダーイ:夏の夕べ
グリーグ:組曲「ホルベアの時代から」
ドヴォルザーク:交響曲第4番

下野竜也/東京都交響楽団


下野さんと都響。下野さんは去年音大のオーケストラで聴いて聴きたいと思っていました。今は日本のいろんなオーケストラに客演しているみたいですね。下野さんってチェコもの得意なのかしら?今日はチェコ特集と思ったらグリーグがいた。。。と思ったら、しかもコダーイもチェコじゃないし。わたしの中のヨーロッパ地図、一体どうなってるんだ。

始まりはコダーイ(ハンガリーの人)の「夏の夕べ」。今年は残暑が厳しくないみたいだけど、こういうほんのりと涼しげな曲はいいですね。管楽器のソロの多いこの曲。ただ、都響さんって個々の奏者の音色の色彩感に少し魅力が不足している感じがして、それが少し残念。都響さんの特徴の生真面目で精度の高いアンサンブルは健在で、プリンをめちゃくちゃ鋭利な刃物で切った感じ。でも、プリンをナイフで切って食べるのも何だか味気ないよね。温かみのある木のスプーンで食べたいくらい。

グリーグの「ホルベアの時代から」は、えっ?これグリーグの?っていう感じのグリーグらしさが全く見られない音楽なんだけど、それもそのはず、あとで読んだプログラム・ノートにあった作曲家自身の言葉によると「これは自分の個性を隠す本当に良い練習になった」。ノルウェーのバロック期の作曲家ホルベアの語法を探求することによって自分にはないものを習得しようとしたのですね。弦楽合奏のこの曲もさっきの雰囲気を引き摺っていて、固いクリアな音は北国な感じの透明感なんだけど、わたしの好みは、柔らかな奥行きというか、音にもう少し色気が欲しかったかな。

最後のドヴォルザークの交響曲第4番は、全く初めて聴く曲。ドヴォルザークの交響曲って6番以降しか聴いたことないんだ、わたし(いや第3番はCDに入っていたっけ)。どんなんだろうとワクワクと聴いていたら、うん、やっぱり、さすがドヴォルザーク。どうしてこの曲が滅多に演奏されないんだろう。ドヴォルザークってもっと評価されてもいいのにな。そして、まさにドヴォルザークの生きていた時代の雰囲気を生き生きと映してる。それって、反対に言えば、ドヴォルザークの個性がまだ薄めということにもなるかもだけど、あるところでは、リストを感じたり、シューマンが出てきたり、ワーグナーの初期の音楽を見つけたり、楽しかった。
下野さん、この音楽に自信を持っているのでしょう。確信を持った棒さばきでオーケストラをリードしていきます。音楽を分かりやすく聞かせてくれて、初めて聴くこの音楽もすんなり身体に入ってきました。それにしてもドヴォルザークの親しみやすさ、独善的な民族主義に陥らないインターナショナルな地域性、品の良い中庸さってステキって思ってたら、第3楽章になってどひゃーーー。なにこのはっちゃけぶり。弾けた行進曲。シュトラウスがマーラーの交響曲第3番の第1楽章の行進を労働者の行進のようと言ったそうだけど、その言葉を思い出してしまいました。楽しいデモ行進(ヨーロッパのデモって日本のと違って楽しそうなんですよん)。もしくは子供たちとわいわいとピクニックに行くような気分。ドヴォルザークって。なんか彼の別の一面を見てびっくりしました。ますます親しみがわいて。
続く第4楽章もその気分のうちにいたのだけど、都響の演奏はちょっと生真面目かなぁ。都響らしいと言えば都響らしいんだけど、下野さんは煽ってたのに。ドヴォルザークといっしょに弾けっちゃったらいいのに、踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らな損損って音楽をカオスのぎりぎりのところまで崩していくような勇気が欲しかったです。新しい音楽を知るには、みんなが何となく楽しめるのは今日のような演奏なのかも知れないですけど。

by zerbinetta | 2015-09-02 15:36 | 日本のオーケストラ

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