シューベルトの翳り 志鷹美紗リサイタル   

2015年11月26日 @すみだトリフォニー小ホール

シューベルト:ピアノ・ソナタ第13番
モーツァルト/リスト:「ドン・ジョヴァンニの回想」
シューベルト/リスト:「水面に歌う」
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第23番「熱情」

志鷹美紗(ピアノ)


広島在住のピアノスト、志鷹さんのリサイタルにひょんなことから伺いました。すみだトリフォニーの小ホールは初めて。

志鷹さんは、ほんわりしたかわいらしい人。ほんわりといえば、アリス・サラさんもそうなんだけど、アリスさんがエルメのマカロンとすると、志鷹さんは蒸し立てほかほかの酒まんじゅう(ん?広島だから焼きたてのもみじまんじゅう?)。ああ、何てたとえだ。ちなみに裸足ではありませんでした。経歴を見ると、コンクールで賞をとったりCDを出したり、リサイタルをしたりと経験のある人だけど、何だかちょっと緊張しているように見えました。わたしにそう見えただけで、いつも同じ感じなのかも知れませんけど。

わたしは、ピアノを弾けないのでピアノのことは分かりません。なので、感じたことだけ、素直な感想を。今日、一番いいなと感じたのは、シューベルト。第1楽章では、まだ少し音楽会が始まる堅さがあった感じだけど、小さな声で歌が聞こえ出した第2楽章から、本来の感じになってきたみたいで。まだ若い番号の作品で、かわいらしい明るい音楽なんですが、最後の作品たちに聞こえる、暗い淵から溢れてくるような死の予感を感じさせる演奏にびっくり。第1楽章の、左手のねっとりした暗闇や(第21番のソナタ!)、第3楽章の明るさの中に瞬間現れる彼岸。そんなシューベルトの心の裡をどきりと聞かせてくれた演奏でした。すてき。

志鷹さんの技術の確かさは、リストの編曲によるモーツァルトとシューベルトの演奏で証明されました。志鷹さんは決して派手なヴィルトゥオーゾではないと思うけど、音楽を聴かせるのには十分。ただ、少しペダルを使いすぎているのか、音が濁るというか少し曖昧になるのが気になりました。ピアノを知らないわたしが言っても説得力は全然ありませんが。それにしてもリストの編曲、というかもう作曲に近い?、はちゃめちゃだなぁ。なんか、リストが好きになりました。もっと、聴いてみたい。

最後の「熱情」は、第1楽章、躊躇いがちに始まって(ほんとにそんな感じでした)、音楽が急流のように流れ出すのを今か今かと待っていたんですけど、ずっと躊躇いがちな感じというか少し動いては止まってって、わたし、曲を勘違いしてた。。。迸るのは最後の楽章ですね。勘違いのせいでずっともやもやと聴いてしまった。悔しい。わたしの、ばか。

アンコールは、バッハの「ゴルトベルク変奏曲」から「アリア」とショパンの練習曲の10−4。「アリア」を聴くと何だかキノコが食べたくなる、というのは置いといて、優しげなとてもステキな演奏でした。難曲で知られるショパンの練習曲は、弾き慣れているのでしょう、肩の力の抜けた余裕の演奏でした。
ささっと、お辞儀を済ませて、志鷹さん、ホールのロビーでファンの人と話をしたり、お客さんをお見送り。こんな感じもなんか微笑ましい。

志鷹さん、演奏を始める前、ピアノの前に座ってしばらく黙考するんですけど、何を思っているのかしら。音楽を歌っている風にも見えたんですけど、きっと秘密ですね。そうそう、プログラムの曲目紹介の文章、それぞれの曲で文体が違ってて、別々の人が書いたのか、同じ人が違う機会に書いたものを寄せ集めた感じでした。ちょっと惜しいなぁ。
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by zerbinetta | 2015-11-26 01:53 | 室内楽・リサイタル

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